人生は意思決定の連続ですが、大人になっていけば簡単な意思決定の場面というのは、ほとんどなく、トレードオフについて、慎重に考えていかなくてはいけません。トレードオフってこちらを立てればあちらが立たずみたいなことで、2つの選択肢の矛盾を解決するのではなく、妥協点を探るということが必要になってきます。
留学の話で言えば、「質の良い語学学校で日本人が少ないところを探しています。」というのは、トレードオフをあまり理解していない人の典型的な問い合わせです。日本人(あなた)は質の良い学校で勉強したいと考えているのに、日本人がいない学校を探すというのは、最初から無理な注文なのです。こういう場合は、学校の質と日本人の数について、学校を決める際にどちらがより重要なのかを考えてもらいます。
似たような話だと「大学時代は成績が悪かったのですが、こんな私でも申請できる奨学金がある大学院を探しています。」という問い合わせも時々やってきます。奨学金とは、その大学が授業料を負担しても入学してほしい学生に対して提供するものなので、成績が悪い人が申請してもそれが承認されることはないのです。
このような問い合わせをしてくる人って、トレードオフを理解していないというよりは、ダメ元でも良いので、とりあえず聞いておこうというタイプの人が多いし、10年前に比べて明らかにそのような人が増えていると思います。そういう人たちって、戦略性があるようで無いわけだし、とりあえず聞くだけなので分析力が養われていくこともなく、頭は良くなっていきません。
でも、これからAIの時代になると、このダメ元でなんでもとりあえず聞いてみる人たちって、さらに増えていくんでしょうね。AIが、「君、頭悪くなるから、もう少し自分で考えてから、質問した方がいいよ。」とかって答えてくれることは無いんでしょうね、きっと。