物語を魅力的にするための留学

ある人と友達になりたいと思ったり、この人を採用してみたいと感じる理由には、その人の人生の物語が魅力的かどうか、ということがあると思います。

そしてどんな魅力的な物語にも、何かにむかって努力していると障害や難しい問題や危機が訪れて、苦しい状況になるけど、それを克服して成長するという展開が必要です。生まれてから、私の人生は苦労したこともなく、平和で幸せな人生ですという人が魅力的かどうかは、微妙なところです。

僕たちの会社のWEBサイトには留学生たちの体験談を数多く掲載していますが、その物語は、人それぞれ、本当に面白いし、魅力的です。でも、自分ではその魅力に気づいていなかったり、うまく言語化できないでいたりします。僕たちが体験談をお願いしたり、インタビューなどをすることで、いかに自分の経験が特別なものなのかを気づくという事もあるようです。そして、僕たちの仕事の一番面白いというかやりがいを感じるのが、そのような物語を一緒に言語化(最近は映像化も)していくことなのです。

せっかく留学をしても、「世界中の友達に会えました。カフェでバイトができて儲かりました。楽しかったです。」みたいな物語でもなんでもない体験談にならないように、留学のプランを一緒に考えていければと思います。

国が行けと言うから留学?

留学の仕事をするようになって、15年くらいになりますが、今の時代は国や大学が留学を奨励するという不思議な時代です。10年以上前は、留学するための休学は許さないスタンスの大学が多かったのに、今ではどんどん留学しましょうという全く逆の雰囲気になっています。教育って国が責任を持ってその国の若者たちを育てるためにあると思うのですが、それを例え短期間であっても丸投げしちゃうというのは、責任あるスタンスではない気がします。しかし、それのおかげで留学業界は恩恵にあずかれるので、ロビー活動にも力が入るのだと思います。

お上の言うことを聞いて思考停止になりたくない、少し尖った若者たちのために留学ビジネスをしている僕にとっては、なんだかなあって感じなのです。海外で学ぶことの一番大きなメリットは、国や日本人と言う集団から少し距離を置いて、世界中からやって来た人々の中で、自分とは何かを考える機会を得ることだと思います。大学の授業の一環で仲間と一緒に海外に出かけても、それは修学旅行で京都に行くのと同じくらい印象に残らないでしょう。「この件、日本人の君はどう思う?」と尋ねられる環境がどのくらいあるのか、そして、その時に周りの海外からやってきた友人たちの共感を呼ぶような答えができるかどうか、そんな目的のために鍛錬を重ねる留学生活を楽しんでほしいと思います。

最初が肝心

日本の大学を卒業した人たちで、大学の単位をひとつも落としたことの無い人ってあまりいないのではないでしょうか?僕も大学3年生までに落とした単位をカバーするために、大学4年生の時には毎日授業を受け、かつひとつも落とせない綱渡りな状況で大学を卒業しました。すでにそれから40年も経っているのに、時々単位が足りないという夢を見るので、いかにそれがトラウマになっているかが分かります。

しかし、トラウマだけでは済まないのがオーストラリアの大学です。当時の日本の大学の授業料は年額が決まっていて、いくつ授業をとってもとらなくても年額の授業料は同じというシステムでした。(今も考え方は似ていると思います。)

オーストラリアの大学の場合、授業料は科目ごとに支払うので、ある科目を落としたら、次の年にまた同じ金額を払って履修しなくてはいけません。そして1科目の料金は40万円から50万円くらいなので、難しそうなので辞めましたみたいに気楽にあきらめることが出来ないのです。(科目を変更しても問題ない期間も設定されています。)入学前は奨学金の申請とか、授業料が比較的安い大学を選ぶなどして、一生懸命学費を抑える努力したのに、その努力があっけなく無駄になってしまいます。

そして、その悲劇の多くは、最初の学期に起こります。オーストラリアの大学は英語力のスコアと高校の時の成績で査定され、合格を得るまでのプロセスもシンプルで早いので、合格通知を受け取ってから実際に留学するまでに余裕のある時間が過ぎていきます。ちょっと気が緩んで、あまり準備しないままに大学がスタートしてしまうと、取り残されてしまうのです。そんな若者たちを何人か見て来ているので、私たちのオリエンテーションでは、最初の学期はアルバイトがどうとか、住むところがどうとか心配しない環境を作って、ひたすら勉強しなさいとアドバイスしています。最初の学期を無事に乗り越えて、自分のペースで勉強する方法が分かったら、生活も楽しむ余裕が出てきます。高校の友人たちが日本の大学で楽しんでいる姿のインスタを横目で見ながら、最初の学期は歯を食いしばって頑張ってください。

編入か大学院か

最近は、日本の大学生からの編入についての問い合わせが増えています。今は日本の大学2年生あるいは3年生だけど、今まで取得した単位を使ってオーストラリアの大学に編入をして、オーストラリアの大学卒業資格を取得したいというものです。日本の大学の授業がつまらないことが問題なのか、新しい道が見えてきたのか、理由はよく分かりませんが、結構有名な私立大学の学生たちからの問い合わせが、月に5件くらいやってきます。

僕はそんな方々には、日本企業の新卒採用で有利なポジションを取りたいというのであれば、編入を目指すと言う戦略も正しい可能性はあるけど、もし、将来的に世界やオーストラリアを舞台に活躍したいのであれば、日本の大学をちゃんと卒業してから、オーストラリアの大学院に進学することを勧めています。

オーストラリアでは、就職にあたり、経験や知識が重要視されます。そのため、多くの学生たちは大学院に通って、自分の専門分野やその業界の知識を深め、インターンなどして、ネットワークを作りながら就職活動の準備をします。みんな明確な目標を持って動いています。ですから、学びたいことや進みたい道が明確なのであれば、編入のような中途半端なことではなく、オーストラリアの大学院でしっかりと学ぶべきなのです。

それは、すごく苦労やストレスも多い毎日でしょうが、きっと10年後20年後に世界を舞台に活躍するようになって、あの時の決断が人生を変えたと語れるようになるのだと思います。

アンケートに気をつけろ

今日の話は、道端で「アンケートいいですか?」と声をかけてくるおばさん達に気をつけろという話ではありません。(でも、あのビジネスモデル?は僕が学生の時からあるので、40年間は普遍だということですね。それはそれですごいというか、日本って何も変わっていないのが怖いですね。)

何かを発表するためにアンケートを取っているという事に気をつけろという話です。政治家の保身のためのアンケート調査は、信じられないのは当たり前ですが、世の中、似たようなことは至る所で見つけることができます。

「お客様の満足度98%!(当社アンケート調べ)」みたいなのは、嘘つけ!と突っ込みたくなりますが、「お客様の満足度70%(当社アンケート)」という正直な会社があったら、きっと98%の会社を選んでしまうのが人間の心理の悲しいところです。ですから、発表されているアンケート結果を意思決定のための情報としては使わないと決めた方が正しい決断につながります。

アンケートは自分たちのサービスや商品の質を改善するためにお客様の意見を聞く目的で開発されたものなのに、それがいつの頃からか自己満足を通り越して、マーケティングのための情報になってしまっています。年寄り向けの通販サイトやテレビでは、そんな情報ばかりで、爺さん婆さんは簡単に騙されてしまいますが、留学を目指す若者達には、そんな手法が役に立たない判断力を持って欲しいと思います。

オーストラリア留学は30歳までに

先月、オーストラリア政府から、来年以降の移民政策に関する方針が発表されました。コロナ以降に急増したワーホリや留学生たちに対するルールも大きく変更されます。

方針を簡単に言えば「若くて優秀な人たちは、ぜひオーストラリアに来てください。チャンスも増やしますよ。でも、ただ滞在して働くために学生ビザを申請したい人には来てほしくありません。」ということです。これは、あるべき姿というか国としては正しい方向なんだと思います。出稼ぎワーホリに来て、居心地が良かったり、稼げる環境なので母国に帰りたくない人たちが、ビザ取り学校と呼ばれる学生ビザを取得するためだけのゆるい学校に通う人が多いということは、国にとってもその人たちにとっても好ましいことではないのです。しかし、いきなりルールが変わることは、多くの人々たちの人生を狂わすことになるので、今年はオーストラリアの留学市場は少し混乱すると思います。

私たちの会社は、ビザ取り学校とは契約がないので、その市場では特に業績に影響はありませんが、今回の政府の発表で気になることと言えば、大学や大学院を卒業した時に申請できる卒業生ビザの年齢制限が35歳となったことです。今までは40代でも申請できたのが35歳までということになると、40歳の人が留学を機にキャリアチェンジをして、オーストラリアで就労・永住などを考えることがとても難しくなります。ということは、社会人になってからの留学は30歳くらいまでには考えなくてはいけないのです。人生100年時代だし、いくつになっても人生は変えることができるとは思いますが、オーストラリアでのキャリアを考えるなら、早く動かなくてはいけません。30歳までは遊んで、経験積んで、みたいなことを考えているとチャンスを逃してしまう可能性もあるので、20代の人は気をつけてくださいね。

世の中の情報というもの

先日、日本のテレビ番組制作会社から、留学生たちの間で、アデレードが留学先として人気急上昇でロケを行ったので、どのくらい留学生の数が増えたか教えて欲しいというメールがありました。きっとうちの会社は、アデレードにオフィスを持っている珍しい会社だから連絡をしてきたのだと思いますが、答えには困ってしまいました。

なぜなら、アデレードは、コロナの期間にそれまでとても人気で質の高い語学学校が2校閉鎖してしまったので、その影響でコロナ前と比べても留学生の数は増えておらず、また英語が出来ないと簡単にはアルバイトは見つからないので、普通の留学生たちにはハードルが高い街だからです。アデレードで成功するのは、英語力がかなり上達しないと難しいのです。テレビ番組制作の方に忖度して、「人気急上昇です!アデレードは今がチャンス!」みたいなコメントを返すのも、うちの会社らしくないので、正直な状況をお知らせしました。当然?ながら、返事は来ていません。作った番組はどうなったんでしょうね。その番組を見て、アデレードにワーホリとかでやって来て、話が違うとか言われても僕たちは困っちゃうんですけどね。

ということで、世の中の情報なんて、誰かが意図的に作ったものです。フェイクニュースでなくても、誰かの思惑というものが必ず入ってきます。もちろん、この僕の文章だって、「アデレードに留学に行けば楽勝!」みたいなことを考える若者はアデレードには来ないでねという思惑が入っています。そうなってくると、いったい何を信じればいいの?みたいなことになるわけです。僕は、それが大人になっていくために学ばなくてはならない、とても大切なスキルの一つだと思っています。つまり、胡散臭い話とか胡散臭い人を見極めるスキルです。これは、自分で考えて自分で意思決定して、時々間違えていかなくては育たないスキルです。大学進学とか就活とか20代になるまで、親とか友人とかに意思決定を委ねていると、40歳とか50歳の時にミスを犯してしまうので、若いうちに経験を積んでおいた方が良いですよ。

アンテナを閉じる?

先日のサンシャインコーストまでのドライブの途中で、ランチで立ち寄ったのが、ニューサウスウェールズ州のParkesという街の郊外にある、電波天文台。アポロ11号が月に着陸した時にも活躍したというオーストラリアの歴史的な望遠鏡ですが、まだ現役で使われています。映画にもなっているので、オーストラリア人にもよく知られた場所です。

快晴の空の下、併設されたカフェでコーヒーを飲みながら、望遠鏡を眺めていると宇宙からの声が聞こえてきそうです。もしかしたら、僕たちには知らされない宇宙からのメッセージの解読をここで働いている人たちは秘密にやっているかもしれない、、なんてことを考えるとドキドキするというか楽しくなってきます。

でも、よーく考えてみると、アンテナが大きすぎて、毎日のように大量のノイズをキャッチしてしまうのではないかと心配になりました。それがノイズなのか意味のある信号なのかをチェックしていく仕事って、けっこう大変そうだし、好きでなくては出来そうにありません。疲れたから昼寝しようとか、良い天気だから散歩に行こうみたいなことも、ここでは許されそうにありません。

若い頃には、社会にしっかりとアンテナを張って、情報を取捨選択しましょうとかって指導された気もしますが、今のようにノイズだらけの世の中だと、いかにアンテナを閉じるかの方が重要な気がします。もし、このブログを読まれている方がオーストラリアにいる留学生だったら、まずは日本に向けたアンテナを閉じてみましょう。日本の芸能界がどうなろうと、友達がパーティーをして楽しんでいたとしても、今のあなたが知る必要のないことだらけです。それよりも、オーストラリアの生活を充実させるためにやるべきことを実行しておきましょう。オーストラリアにいられる時間はあっという間に過ぎていってしまうのですから。

お金で買えないやりたいこと

アデレードは、どうも冬の時期は雨が多いようで、日曜日に雨が降ると午後は図書館にやってきて、雑誌を読んだり、こんな文章を書いたりしています。街の図書館ですが、広いしのんびりできるので、お金がかからないのにいい時間を過ごせるなと思ったところから、今日のお話です。


やりたいことって、2つの種類があると思います。少し無理やりな分け方ですが、お金で買えるものとお金では買えないものの2つです。旅行したいとか、あそこのレストランで食事したいとか、あの映画を観たいなどは、お金で買えることです。そして、今の時代としては、それらのことはSNSに親和性があり、インスタ映えしていくものです。

それに比べて、お金で買えないのは、文章を書いたり、散歩をしたり、図書館で本を読んだり、友だちと時間を忘れて語り合ったり、その後に、その話について考えたりする時間です。それは、あまりインスタ映えはしないけど、何かしらの新しい気づきや価値を生み出したり、新たなやりたいことや、解決したい問題などを気づかせてくれるかもしれません。

10代の頃のやりたいことって、お金はあまりかからなかったのに、大学生くらいになると、やりたいことにお金がかかるようになってきて、やりたいこと=消費活動の癖がついていきます。そのマインドセットのまま、社会人になると、お金をどんどん使って、あまり意味のないやりたいことに時間を費やしてしまいます。そして、やりたいことがだんだん減っていくのです。

そんな日常を変えるためにも、オーストラリアに留学に来たら、どうせお金は無いし、物価は高いので、海外から来た留学生や地元の人たちとコーヒー一杯の投資でひたすら話をしてみてください。あるいは、街をひたすら歩いて、写真を撮ったり考えたことを書いてみてください。やりたいこと=消費のマインドセットを変えることで、その後の人生がきっと充実してくると思います。

なぜなら、AIの時代に、人間に残された仕事って、やりたいことを考えるということだからです。優秀なアシスタントに何をやってもらうか、常にアイデアが出せるようなトレーニングをしておくと、きっと成功していくんだと思うのです。「やりたいことってないんですよねー。」みたいなことを言ってる場合では無いのかもしれません。

ワーホリはテーマを持って

一時期の、出稼ぎワーホリみたいな問い合わせは、減ってきましたしたが、いまだに多いのは、「海外で生活をすることに憧れがあったので、ワーホリに行ってみたい」という問い合わせです。今の若者たちにとって、海外で生活をするというのは、人生のバケットリストの一つになっている印象があります。せっかくの一生に一度の機会なのであれば、単なる思い出で終わるようなものでなく、その後の人生を少し良くしていくきっかけになって欲しいと思います。


まずは、お金を稼ぐ目的のためにワーホリに行くというのは、やめた方がいいです。オーストラリアは時給も高いけど、生活費も高いので、期待していたほどは手元に残らないです。たとえ一時的に100万円儲けたとしても、100万円なんて、半年もすれば無くなってしまいます。それよりも、30代以降に自分がやりたい仕事に就くために、経験を積み、実力をつけ、語れるトピックの引き出しを多く持てるようになった方が、経済的にも長期的に成功すると思います。

そのためにも、何かしっかりとしたテーマを持つべきだと思います。例えば、よくある目的の一つに「いろんな国の人と話してみたい」というのがあるのですが、実際、どんな話をしたいかは、よく分かりませんみたいな人が結構多いのです。いろんな国の人の結婚観を聞いてみたいとか、人生の成功について聞いてみたいとか、仕事観について聞いてみたいとか、ちょっとテーマを絞るだけで、自分だけが語れる世界が作れるのです。

将来、カフェを経営したいなら、オーストラリアのカフェの成功しているカフェと成功していないカフェの違いのレポートを作ってみるとか、将来、農業をしたいなら、ファームを渡り歩いて生産性の違いの要因を探ってみるとか、テーマは無限に作れると思います。自分しか出来ない経験を積みたいと思ったら、ぜひ、そんなテーマ作りについて考えてみてください。