タウンズビルで考えたこと

前回の旅のブログは西オーストラリア州のブルームという街の話だったのですが、あれからたった半月で、オーストラリアのほぼ反対側の東海岸のタウンズビルという街に今週は滞在しました。その間、何をしていたかは、またブログを書きたいと思いますが、あまり電話もつながらない、大自然の中で生きていました。

さて、ここタウンズビルですが、人口18万人、クイーンズランド州の北部では最大の街です。海も山も街もあるので、車があれば、飽きることはなさそうな気がします。今週は冬にもかかわらず、最高気温は25度以上の日がずーっと続いていました。朝夕は15度くらいなので、散歩には最高。でも、きっと夏は暑そうです。寒いのが嫌いな人、夏服だけしか持っていない人は、ぜひタウンズビルに留学してみてください。海洋学や環境学で有名なジェームズ・クック大学があります。街から車で15分くらいの郊外の自然あふれる素敵なキャンパスです。

さて、ここ数日、東京やシドニー、メルボルンなどの大都市に生活することと、このタウンズビルなどの地方都市に暮らすことの違いって何なのかを考えているのですが、誰にでも思いつくようなことはさておき、僕なりの言葉で考えると「迷路の楽しさと荒野の楽しさの違い」みたいなイメージです。どちらがいいのかは人それぞれです。日々、迷路が増殖してそれをくぐり抜けながらゲームのように人生を楽しんでいくのか、大きな時間の流れの中で、そして大きな空間を見渡しながら、一歩一歩進んでいくことに生きがいを感じるのかは人によって、そしてその人のライフステージや年齢によっても、どちらが良いのかは違ってくるのだと思います。

不幸なことは、荒野に適している人の多くが、誘惑たっぷりの迷路にはまって、逃れられなくなっている状況なのかもしれません。迷路のゲームは友だちを含めた多くの人たちが参加しているので、そこから抜け出すのには、ちょっとした勇気が必要かもしれませんが、実際に抜け出してみると、その視界の広さにびっくりすることもあるかもしれませんよ。

ブルームに月を見にやってきた

西オーストラリア州の州都のパースから、ブルームまで2,700キロ。途中、ピナクルズ、Kalbarri、Shark Bay、Minilya、Karratha、Port Headlandに泊まったり、数日滞在したりして、2週間の行程でした。


この距離って、日本でどのくらいなのか調べたら、稚内から鹿児島まで車で移動したのと同じくらいです。オーストラリアは本当に広いです。

西オーストラリアの北側って、鉱業で発展した街がほとんどなので、あまり魅力的では無いのですが、このブルームに来るために頑張ってきたという感じです。その目的は、「月への階段」という自然現象。ブルームは東にすごく長い遠浅の海岸があり、そこで満月が登る時には干潮とも重なって、月に向かって階段ができたように見えるというものです。

その現象が見える日には、地元のマーケットも開催され、ある意味お祭りな感じでした。オーストラリア中からやってきた観光客たちが、この小さな街にこんなにいたのかというくらい混んでいて、たった20分くらいの自然現象をみんなで楽しもうという雰囲気でした。

月が昇ってくると、ちょっと歓声が上がり(日本だったら拍手する人もいるのかな。)幻想的な赤い月が見えてきます。月の引力のおかげで、まさに海の水が引っ張られているように潮が引いて、遠浅の海岸が干潟のようになって月に向かっての光の道が現れます。

こんな幻想的な景色を、昔の人たちはどんな意味を見出しながら見ていたのか、そんな想像をしながら、眺めていました。きっと、ニュートンよりもずーっと前に、月が持つパワー(引力)によって海の水が引いていくことは知っていたに違いありません。そして、クリエイティブで、魅力的で、実用的な(その日は魚や海の生物がよく獲れるみたいな)物語が受け継がれていったのだと思います。

物事や現象に意味を見出すのは、人間でしかできないことだし、昔の人たちの一番の知的な遊びだったに違いありません。たとえ間違っていたとしても、Googleに頼らずに、ちょっとだけ自分の頭で想像してみるのは、いいことだと思いますよ。

ブラボー!

まさか、このタイトルを読んで、それがリンゴの話だと分かる人はいないと思います。西オーストラリア州の南西部はリンゴの産地だそうで、いくつものリンゴ畑を見かけました。そして、この地域はリンゴの品種改良にも積極的に取り組んでいたということで、日本人留学生に人気の「Pink Lady」(今の留学生たちは、この名前を聞いて、ペッパー警部を思い浮かべることはないと思うけど)は、この地域で作られて全豪に広まった品種だそうです。

そして、今日紹介したいのは「Bravo」という品種。たぶん、西オーストラリア州でしか売ってないと思います。少なくともクイーンズランドや南オーストラリアのスーパーマーケットでは見ませんでした。そして、普通のリンゴより値段が2割くらい高いのです。でも、こんな名前、普通はリンゴにつけませんよね。「拍手喝采!」とか「めちゃうま!」みたいな感じでしょうけど、リンゴってそこまでの賛辞を送るタイプの果物なんでしょうか?

西オーストラリアの人たちって、田舎ものと言われてきたコンプレックスの裏返しというか、なんか、東海岸の人たちに対して「私たちは東とは違うから」みたいな意識が強いのが面白いです。今回のコロナウイルスに対する対応も、頑なに州の境を閉じて、「東の奴らは、そんなに簡単に入れてやんないよ」みたいな州知事の態度や政策が州民にはとても受けてました。

ということで、このBravoというリンゴも、「こんな美味いリンゴ、東にはないでしょう。ブラボー!」という、西オーストラリア州の農民たちのプライドというか自画自賛というか、そんな思いがこめられたのだと思います。なんかちょっと嫌な感じです。じゃあ、そんなに美味しいんですか?ということでクイーンズランド州民の僕としては疑いながら食べてみたのですが、日本人留学生が好きなもう一つの品種のFujiとPink Ladyを足して2で割って、ジューシーにしたブラボーな美味しさでした。西オーストラリアの皆さん、すごく美味しいリンゴだということは分かりましたから、ぜひクイーンズランドにも輸出していただけるとありがたいです。

人口35,000人

今週は西オーストラリア州のAlbanyという街に滞在していました。この街の人口は約35,000人。日本で検索すると静岡県熱海市とかが出てきましたが、日本の市町村の人口ランキングでは673位。つまり、このくらいのサイズの街って日本にはいくらでもあるんですね。しかし、人口が少ないオーストラリアではAlbanyは全豪で45位の主要な?街なのです。


オーストラリアでは、同じくらいの人口の街として、ビクトリア州のWarrnambool、タスマニア州のDevonportなどがあります。どちらもしばらく住んでみたい、素敵な街です。おしゃれでオーガニックなカフェがいくつかあり、こだわった本屋さんがあって、ファーマーズマーケットが開催されて、テニスクラブもあります。どうも、僕はこのくらいのサイズの街に惹かれるのです。人も優しそうだし、きっと1年も住んだら多くの友だちができそうです。

そして、Albanyの魅力は、この写真にあるようにダイナミックで変化のある風景。街から20分ドライブすれば、国立公園です。自然と近い街というのは、僕にとってはすごく大切な条件です。

もし35,000人が魅力的な街を作るために適したサイズなのであれば、日本には何百もの可能性のある場所が存在していることになります。オーストラリアに留学したり生活した若者たちは、日本に戻ったら素敵な街づくりやコミュニティーづくりに参加して、オーストラリアでの経験や考えたことを活かしてほしいと思います。

ひたすら真っ直ぐな道

南オーストラリア州から西オーストラリア州にかけて、陸路で移動しようとすると、オーストラリア人も人生で一度は経験したいと考えているナラボー平原をドライブする必要があります。このEyre Highwayが唯一の舗装された道路だからです。


僕たちは南オーストラリア州のCedunaという場所から西オーストラリア州のNorsemanという街まで、この道路を使いました。信号も何もない道が1200キロくらい続きます。1200キロって東京から熊本くらいまでなので、長距離トラックの運転手ってこんな生活なのね、という体験でした。その間に数カ所のガソリンスタンドとモーテルが一緒になったような、Roadhouseという休憩地があります。僕は安全も考えて1日のドライブの距離は300〜400キロくらいに抑えているので、3ヶ所のRoadhouseに泊まりました。

そして、西オーストラリア州に入ると、オーストラリアで(たぶん世界でも)一番長い真っ直ぐな道と言われる90マイルの直線道路があります。約150キロ、ひたすら真っ直ぐな道なのです。その道を走りながら感じたのは、ここに道を作らなくちゃいけないという当時の人々の強い意志です。その意志が、ここに道ができれば物資が動かせてお金が儲かるという、金銭欲と同義語だとしても、その強さに敬服してしまうのです。

しかし、現代には、もうここに道を作らなくてはいけないなんて場所は残っていないでしょう。それよりも作ってしまったけど今はいらない道を美しい自然に戻すための強い意志が必要なのかもしれません。そして、そのモチベーションの考え方が、大人と若者とでは、随分と乖離してしまっていると思うのです。金儲けという貧乏な時代の大人の論理ではなく、地球環境というテーマにずっと敏感な若者の論理で開発(回復?)は進められるべきなのだと、なが〜い退屈な道を走りながら思ったのでした。

Eat Local

今週は、Port Lincolnという街に滞在していました。ここは、オーストラリアでも有数の漁業の街です。街にはいくつもの日本で言えば〇〇水産みたいな会社があって、加工をしたり冷凍して輸出の準備をしています。安定した需要のおかげで、なんと、この街は、人口あたり一番ミリオンネア(日本円で言えば億万長者)の数が多いそうです。確かに、漁村というよりはお洒落なヨットハーバーの街みたいな場所もありました。


そして、その漁業を支えているのは日本市場。このPort Lincolnは南マグロの養殖が盛んで、その多くが築地に空輸されているそうです。日本人の食欲がこの街を作っていると考えると、その繋がりにちょっと嬉しくなったり、しかし、こんな南半球の遠くからコストやガソリンをいっぱい使ってわざわざ送っているグローバル市場の胡散臭さみたいなものを感じたりしています。

この旅で気をつけていることは、できるだけ地元の食材で美味しいものを食べようということです。今週は久しぶりに日本向けのマグロの刺身も食べたし、とれたての生牡蠣を楽しんだりしました。でも、一番フレッシュで美味しいと感じたのは、この地域の特産であるGarfish(日本ではサヨリ)のフィッシュ&チップスでした。これからも、グローバル市場に流されるおしゃれな食べ物ではなく、ローカルな人が食べてる素朴な味を楽しんでいきたいと思います。

運転しながら「やあ!」

今週は、Yorke Peninsulaという半島の先にある、Marion Bayという街に滞在していました。ここは、アデレードから数時間のドライブで来れるので、アデレードの人びとには休暇を楽しむ人気の場所です。到着した日はイースターの祝日ということもあって、周りのコテージは家族づれで賑わっていたのですが、休みが終わると急に静かになってしまいました。


そんな静かなエリアを車で走っていると、不思議なことが。観光客ではなく、地元のドライバー(だいたい、おじさん)とすれ違うと、手をあげたり、親指を示したりして、何か合図をするのです。都会で、対向車から何かのサインがある場合は、この先でスピード違反の取り締まりがあるよとか、事故があるから注意したほうがいいよ、みたいなメッセージなのですが、こんな田舎でスピード違反を取り締まっても、そもそもあまり車が通らないのだから、意味がありません。

どうも、この地域のドライバーの人たちは、散歩中に道ですれ違って挨拶するのと同じ感覚で、たとえ時速80キロで走っていたとしても、「やあ!」と手を上げて挨拶するのです。それがわかってから、なんか楽しくなって、地元っぽい車とすれ違うたびに手を上げてみると、かなりの確率で挨拶を交わすことが出来ました。少しだけ、コミュニティのメンバーに加わった感覚です。

旅をしていると、その異邦人としての気軽さや自由を楽しむのと同じように、その街や人々との繋がりを強くしてみたいという思いが生まれます。それが、僕にとってはカフェに通ったり、テニスクラブに通ったりすることなのですが、この街では、挨拶だけでそれが感じられる思い出ができました。

四季があるっていいよね

先週は、日本の友人たちのSNSの投稿は「桜」一色だった気がしますが、オーストラリアは季節が逆なので、秋が深まっています。

僕が旅を始める前に住んでいたサンシャインコーストは緯度が26度くらい。日本だと沖縄の那覇と同じくらいなので、冬でも寒くならず、1年中テニスをするには最適ですが、四季を感じることはほとんどありません。暑い時期と暑くない時期、みたいな1年です。

今週、滞在しているのは南オーストラリア州のアデレード。南緯35度くらいなので、ほぼ東京と同じです。ですから、秋の感じがとても懐かしい感じがするのです。

先週末に、Mount Loftyという市内から30分もかからない小さな山の植物公園に行ったのですが、そこではすでに紅葉が始まっていました。空気も乾燥しているので、東京の10月とか11月の、秋の長雨や台風の時期が終わって、冬に向かって空気が乾燥し始める、そんな季節を思い出させてくれます。(いったい、いつになったら日本に行けるのだろう。)

日本で暮らす魅力の一つは、四季の移り変わりを楽しめることだと思いますが、アデレードなどのオーストラリアの都市にも、こんな素敵な紅葉と、春にはジャカランダというまるで桜のように期間限定で楽しめる花が満開になり、同じように四季を楽しむことができます。多くの日本人はオーストラリアを、青い空、青い海、美しいビーチ、みたいな南国のイメージとしてとらえることが多いのですが、日本に負けないくらいの繊細な自然を楽しんでもらえたらいいなと思います。

誤解してました

今週はカンガルー・アイランドという島にいます。ここは南オーストラリア州のアデレードから1時間半ほどのCape Jervisという街からフェリーで45分ほどで行くことができます。



アデレードに住む友人の一人が、将来カンガルー・アイランドに住むのが夢だと話していて、今回の旅ではいきたい場所の一つでした。あまり観光地というものには興味はないのですが、ここはアデレードに留学に来た若者たちにはぜひ訪ねてほしいおすすめの場所です。ちょうど今くらいの時期に1週間くらいのんびりと滞在して、素敵な時間を楽しんでほしいと思います。

この島で印象に残るのは、オットセイたち。Seal Bayという場所は、オットセイの繁殖地がビーチの近くにあるので、人間が近づいて観察ができる珍しい場所です。今回は、お金を3000円くらい払って(37豪ドル)ビーチまで降りて説明を受けられるガイドツアーに参加してみました。

オットセイと言うと砂浜で、こんな感じでだらけているイメージが強く、お気楽な動物たちだなと思っていましたが、それは全くの誤解でした。彼らは3日間遠洋に漁に出かけて、疲れ切って家に戻ってきて、こうやって休んでいるのです。3日間泳ぎっぱなし、働きっぱなしですよ。人の目なんか気にしてる余裕なく眠たくなるのは、当たり前です。これからは、尊敬の眼差しを持って、接していきたいと思います。

オットセイの写真を見て、「休日のうちのお父さんみたい」と思った若者の皆さん、確かにお父さんも電車に揺られて、マスクして、酸素が足りなくて、大変かもしれません。でも、オットセイくんたちからすれば、「君のお父さんと一緒にされるのは心外だなあ。こっちは3日間寝ずに働いているんだぜ。」と言われそうです。日本のお父さんたち、オットセイに負けるな!

穴ぼこだらけの街

メルボルンのあるビクトリア州を離れ、アデレードが州都の南オーストラリア州に入りました。今週は、南オーストラリア州側の最初の都市、Mount Gambier(マウント ギャンビアーみたいな発音です。)に滞在しています。



この街の面白さは、マグマの噴火で出来た山というか丘みたいな場所や、噴火で出来たカルデラ湖というかカルデラ池みたいな場所が街の近くにもいくつもあることです。この地域でマグマが活発に動いて噴出した理由は、オーストラリア大陸が南極大陸から離れたことによって断層などができたからだそうで、今では安定した大地なオーストラリアもかつては小さな火山がいくつもあったというのは不思議な感じです。アボリジニの方達の伝説にも火山の話が出てくるので、地球の歴史の時間軸で考えたら、つい最近までこの辺りでは大地が常に動いていたのでしょうね。

また、そんなカルデラの場所以外にも、この辺りは石灰岩の大地なので(つまり昔は海の底だった。)鍾乳洞や、自然に陥没した大きな穴なども街中にいくつもありました。その穴全体に植物を植えて、庭というか公園のようにデザインしています。地元の人たちの憩いの場として、かつ観光客も呼べるスポットになっていました。
そんな不安定な土地になんで街が出来たのか?ネットで調べてみても、答えが探せなかったのですが、多分安定した水の存在がこの街を発展させたのだというのが、奥さんと議論した結論です。街の外れにある火山の噴火でできたBlue Lakeには大量の安定した水があり、1800年代にはそれが何よりも重要な資源だったのだと思います。今でもこの街の水道は、Blue Lakeの水を使っているそうです。
いつか、どこかが陥没してしまうリスクと共存しながらも、アデレードから400キロも離れたこの街には、若い世代がカフェやレストランをオープンさせたりしてコミュニティーを盛り上げているのが、とても印象に残った街でした。