新しい成功の姿

54歳になりました。自分が何歳なのかは、年齢別のテニスの試合に出場するときにしか意識しないので、もう、どうでもいいことの一つです。そんなことより、素敵な景色を見るとか、素敵な会話をしたとか、毎日ひとつでもいいのでいい時間を過ごすことを重ねていくことが大切だと思うようになりました。


会社の経営については、6月に会計年度が終わる今年度も順調で、5年連続の増収増益となります。スタッフもやりがいのある仕事を楽しんでいるので、誰も辞めません。20名の会社としては、十分な成功をしています。それならこの好調な波に乗って、日本での支店を拡大したり、スタッフを増やしたりしてさらなる成長をしようと考える経営者もいるかと思いますが、僕は違う道を行こうと考えています。

そのために、今までとは質の違った成長の定義や成功観を持ちたいと考えています。それは成功を数字だけで測ることではなく、お客様ひとりひとり、スタッフひとりひとりの幸せに、ちゃんと向き合っている会社でいるかで測られたいということです。綺麗な言葉で飾るマーケティング戦略より、ひとりの苦労した留学生の体験談を大事にしていきたい。10人の成功しなかった留学生からの売上より、1人の成功した留学からの売上を評価したいと思っています。

僕もそれなりにこの留学業界で長く働いていますが、なかなか志の高い人に出会えない。みんな数字のことしか考えていない。ビジネスなんだから数字が全てという考え方ではなく、お客様ひとりひとりの最高の経験の一部として僕たちの会社が記憶されることを新しい成功の姿として定義して、そこに向かってベストを尽くしてみたいと思います。

 

 

ロックでいなくちゃ

王より長嶋、ベッケンバウアーよりクライフ、ボルグよりマッケンロー、ビル・ゲイツよりスティーブ・ジョブズのファンになってきた僕としては、会社を経営するならロックじゃなくちゃいけないと思っていました。



ですから、8年前に会社を引き継いだ時点では売り上げの40%ぐらいを占めていた、日本の留学エージェントさんたちの現地サポートオフィスという下請け仕事は3年前には全て終了し、自分たちのお客様だけにベストを尽くすという環境を作りました。誰か他の人や他の会社に頼らなくてはいけないビジネスモデルはロックじゃないし、かつ将来のリスクだと考えたからです。

ところが、どんどん業績が安定し、会社の評判が知られてくると、業界でのお付き合いみたいなことや人的なネットワークについても考えなくてはいけないことが増えてきました。20人といえども社員を抱えるリーダーとしては、社長としての「大人な」仕事もすべきなのでは?ということです。

だけど、そういう仕事って全然ロックじゃない。お客様じゃない人たちに気を使ったり、話すこともそんなにないのにパーティーみたいなところに行くのは(これは日本でもオーストラリアでもあります)ちょっと苦痛です。オーストラリアの年度末は6月で、6月17日にゴールドコーストで行う全社会議で来年以降の方向性について社員に話をするので、初心とか原点のことを考えていたら、ふと、最初のスライドは

「ロックでいなくちゃ」

にしたいと思ったのでした。来年度も、お客様のことだけ考え、僕自身は相変わらずサンシャインコーストの田舎に引きこもり、会いたい人にしか会いに行かないという生活を続けたいと思います。

若い人たちと話していると、会社に入った後の人づきあいで悩んでいる人も多いのですが、社内の人間関係なんて気にしないで自分の時間を大切にと伝えています。

 

 

セミナーを続ける理由

今年に入って、オーストラリアの各支店において「キャリアセミナー」というものを行っていて、すでにシドニー、アデレード、メルボルン、パース、ブリスベン、ゴールドコーストと、弊社の6支店すべてで開催しました。今後も、支店に出張するときには継続的に行っていこうと考えています。

セミナーの内容は就職活動をどう成功させるかというものではありません。その分野はプロの方がいらっしゃるので、そのような方たちにお任せして、僕のメッセージはもっと基本的な仕事とは?とかキャリアとは?とか自分らしい人生って?などのトピックでお話をしています。


留学会社は、お客様に海外の学校に通学してもらえば、学校から紹介料が入り、ビジネスとしては完結します。多くの留学会社が、海外に留学生を送ってしまえばそれで終わりという対応になるのもうなづけます。しかし、留学が成功するかしないかは、現地でのカルチャーショックを乗り越えたり、マインドセットを修正したりと、海外でどう成長していくかが鍵になります。

おかげさまで、ビジネスとしては安定した成長ができるようになり、無理をして利益拡大をするのではなく、ご縁のあった若者たちが、留学をきっかけに本当に人生に成功したり幸せになったりできるように、まずは僕の時間を利益ゼロでも投資してみることにしました。そして、始めてみると、このセミナーをきっかけに若者たちと本音の話ができることは、僕にとって一番の楽しみであり、かつライフワークになってきた感じがします。