小さくても多民族な街

先日の週末は、テニスの試合もあったので、イプスウィッチという街に滞在しました。ブリスベンから電車で約一時間内陸に入った街で、ブリスベンの市内に通っている人も住んでいるような、そんな街です。下の写真で右に見える高層ビルたちが、ブリスベンの街です。


人口は21万人、163カ国の人々が暮らしていて、152の言葉が話されているそうです。もちろん、南クイーンズランド大学という大学のキャンパスがあるので、世界から留学生が来ているわけでしょうが、それでも21万人の中に163カ国の人たちが住んでいるのは、日本人にはあまりイメージがわかないと思います。

日本では、相変わらずグローバル人材がどうの、という話をして偉そうにしている人たちもいますが、僕が日本人に圧倒的に不足している経験というのは、多民族な社会で生きたことがないということだと思います。そんな社会の中で、寛容になって生きていくことが、良い社会を作るための基礎的なスキルになるわけです。


街自体は、なんとなく古くて、お洒落さには欠けてましたが、それでも通いたくなるカフェはいくつかあったし、出会った人たちは、みんな優しかったし、図書館は大きかったし、自然はすぐそこにありました。



ワーホリで、こんな街に来て、仕事を探して、地元の人たちと濃い時間を過ごす、そんなことにチャレンジしてみるのも、ちょっと田舎の街の可能性だと思いました。オーストラリアには、そんな場所がいくらでもありますよ。

21世紀の科学は?

週末はブリスベンで行われていた、サイエンス・フェスティバルに行ってきました。サウスバンクの博物館を中心に、外でもいくつものテントが出されて、様々な機関が自分たちの研究や、子どもや家族向けの科学的なイベントを紹介していました。


ブリスベンにキャンパスのある、クイーンズランド大学、クイーンズランド工科大学、グリフィス大学もそれぞれ、学生たちが自分たちの研究を披露していました。僕が面白いなと思ったのは、クイーンズランド工科大学の環境に優しい新しい服の素材についての発表。服の素材って、コットンも化学繊維も、もちろん毛皮も、あまり自然環境には良くないわけです。そんな時にバクテリアを繁殖させて服に使えるかつ自然に戻りやすい素材を開発するのは意義があることだと思います。


そのほかの多くのブースがそのような、自然環境に優しい研究をテーマにしていたのが印象的でした。たぶん、そういうものの方がお金もかからないし、小さな研究団体においては取り組みやすいテーマなのでしょう。



そして、博物館では、アポロの月面着陸から50年を記念した特別展が開催されていました。きっとNASAが世界中でこの展示を巡回させているんだと思います。あらためて、その当時に使われていた装備やロケットのレプリカなどを見てみると、まだ技術も未熟な中で国家の威信を賭けた大きな挑戦だったということが分かります。当時の人々(僕は小学校1年生だったから、当時の人々の一人だったわけですが)が熱狂したのもうなずけるのです。

しかし、その熱狂から50年を経て、宇宙のことがさらにわかっていけばいくほど、僕の中での宇宙開発に対する興味はどんどん冷めてしまっています。それは、僕たちの地球がいかに幸運な奇跡のもとに生まれ、僕たちが存在しているかがわかることによって、人間に使命があるのであれば、その奇跡である地球を壊さないことが、宇宙に飛び出すよりも大切だからです。

お金持ちたちが、植民地開拓的な発想で宇宙旅行を計画したりしていますが、僕たちは与えられた地球をいかに美しく保つかに科学と技術をもっと使うべきなのでしょう。

NASAの展示の妙なノスタルジック感と、小さなテントのささやかな環境保護のテーマのコントラストが印象に残った1日でした。

世界を広げる本屋さん

新しい街に行くと、僕は本屋さんを探します。基本的に本はkindleで読むので、amazonくんは僕の好きな分野の本をよく知っています。オススメの本もよく紹介してくれます。しかし、それって、地元の顔なじみの友達と会ってる心地よさはあっても、世界は広がっていかないのと同じで、ときどきは冒険をする必要があるのです。


そんな時に、いい本屋さん、適当な広さで、そして編集能力が高い本屋さんを探せると嬉しくなります。本屋さんって、セレクトショップみたいなものなので、限られたスペースの中で、その店独自の品揃えに工夫を凝らしています。僕はビジネスのコーナーを見て、その本屋さんがどのようなマーケティングを考えているかを判断しています。新しい本だけではなく古典のいい本を揃えてくれてると信頼できるという感じです。


先週はメルボルンにいたわけですが、メルボルンでのいい本屋さんは、このReadingsという本屋さん。メルボルンに何軒かあるみたいです。ニュースレターも発行していて、本が好きなスタッフがやってるんだろうなというのが、伝わってきます。


小説からアートからビジネスからサイエンスまで、様々な分野を適度なスペースを割きながら網羅していて、飽きない空間でした。夜遅くまでやっていたので、滞在中ほぼ毎日通いました。今では珍しい、CDやDVDコーナーもしっかりあるのが面白かったです。

留学生の皆さんにお願いです。自分の住んでる街に素敵な本屋さんがあったら教えてくださいね。

繋がりを回復すること

メルボルンのような都会の面白いところは、様々なイベントが開催されていること。


ちょうど環境問題などをテーマにした映画祭が開催されていて、最終日だったのですが、ラッキーに観にいくことができました。

その映画祭を締めくくる、僕が観た映画は「セレンゲティ・ルール」
で、自然界の繋がりにおいて、重要な役割を果たす生き物が外れるとその地域の自然全体が崩壊していくけれど、逆に、その生き物が何かを人間が把握し、それらが復活していくと自然全体が再び繁栄していくという内容を何人かの科学者の研究から紹介しています。

数人の科学者たちが別々に研究していたテーマがある鍵となる人物によって繋がってくということも面白かったし、繋がりを注意深く読み解いていくという姿勢は、自然科学だけではなく、ビジネスや政治や組織など人間の世界や、技術の世界にも応用できるに違いないわけで、今日からの僕の生き方が少し変わった気がします。

シドニーにもこの映画祭が行くようですので、シドニーにいる人は観てください。日本で上映されるのかどうか、よくわかりませんでしたが、映画の元になった同名の本はすでに翻訳もされているようです。

これからも時々、都会にやって来て、知的な刺激を受けることを楽しみたいと思います。

子どもたちがたくさんいる社会

アデレードにやって来たら、偶然にも土曜日にクリスマスパレードのイベントを見ることができました。朝から、続々とホテルの前を小学生低学年くらいまでの子どもたちを連れた家族たちが歩いていたので、結構な人々が集まっているのだとは思いましたが、パレードの沿道では、アデレード中のすべての子どもたちがいるのではないかというくらいのすごい人でした。

日本ではあまり考えられない時間帯ですが、朝が好きなオーストラリアらしく、この大きなイベントは朝の9時30分から始まりました。

パレードの山車はディズニーランドに比較するのはかわいそうなくらい素朴で年季の入ったものたちでしたが、子どもたちはそんなことは気にしません。家族みんなで集まって、出かけて、わいわいして、快晴の土曜日の午前中を満喫していました。


日本は少子化という問題を、破綻した社会保障制度を支えるために子どもが増えなくてはいけないという文脈で話している気がします。しかし、今日、僕がアデレードで感じたことは、純粋に子どもたちが多くいる社会というのはとても素敵で健全な感じがするし、子どもたちを支えるために社会があるのだということです。健全で暖かい社会を作るために子どもたちが必要で、そのようなビジョンや文脈で少子化問題が語られることを期待したいと思います。

眺めのいい街

僕の仕事のひとつは、数ヶ月ごとにオーストラリア国内にある各支店を訪問してスタッフと話したり、その都市に留学している若者たちと会ったりセミナーを開催することですが、先週はパース支店に行ってきました。

僕が初めてパースを訪れたのは、もう22年前のことです。当時勤めていたベネッセコーポレーションで映像制作の仕事をしていて、その関係でこのオーストラリアの西海岸の街に降り立ちました。二人の娘たちが小学校からこの街に留学したこともあり、それから毎年数回は訪ねています。


世界で一番孤立した都市と言われるくらい、近くの大都市から飛行機で数時間飛ばなくてはいけないこの街は、東海岸のシドニーやメルボルン、ブリスベンと比較して、少しのんびりしていて、ゆっくりとした時間が好きな人たちが好む街です。娘たちも、買い物はメルボルンや東京が刺激的で面白いけど、生活をするにはパースがいいらしく、動く気は無さそうです。


彼女たちのように、住みだしたら多くの人たちが気に入るこの街の魅力だと僕が思うことは、その眺めの良さだったり、広々とした空間からくる気持ちの良さです。観光客が必ず訪れるKings Parkに行くと、街路樹のユーカリの木の香りと、街の横を流れるSwan Riverの流れが穏やかで、背伸びしたり、深呼吸したくなってしまうのです。そして、眺めの良さって、考え事をするのに、とても大切なことで、30代の僕はよくこの街の公園やビーチで将来について思いを巡らしていました。

特に何か名所があるわけではないこの西海岸の街に、きっとこれからも、そしていつか引退してからも、この眺めを見ながら、深呼吸をしにやってくるのだと思います。

わんこ天国

旅の途中、ほとんどのAirbnbで犬が飼われていました。小さいのから大きいのまで、シャイなのから馴れ馴れしいのまで、僕たちのスペースに時々やってきては時間を過ごしていきました。オーストラリアの犬たちはペット(愛玩動物)と言うよりは、家族の一員なので、可愛がられているというよりは、一緒に暮らしてるだけという、暑苦しくない関係です。2人で話していても(僕は犬に日本語で話しかけてることが多いのですが)、静かに聞いてくれるので、少しずつ友達になっていく過程がとても楽しいです。星の王子様に出てくる、キツネとの関係みたいな感じです。


オーストラリアでは、犬を飼うためには、ちゃんと犬と飼い主の両方を対象にしたトレーニングに行かなくてはいけないし、一つの家に飼ってもいい犬の数は制限があるし、リードを外して自由に散歩ができるビーチがあったりと、犬を健全に飼うための仕組みというものが整っています。もちろん、野良犬というものは、見かけません。ですから、犬や動物が好きな方は、ぜひオーストラリアに留学に来て、犬を飼っているホームステイ先に滞在したり、Airbnbに泊まってみてください。犬の生活という視点で、オーストラリアと日本を比較してみるのも、面白いと思いますよ。

多様性について考えること

タスマニアで最初に泊まったAirbnbのコテージは母屋が隣にあって、時々オーナーの方が声をかけてくれました。彼は30年前にドイツから移住をしてきた人で、ドイツでは森林の管理をしていたということです。そんなスキルを活かしてタスマニアで森林保護の職を見つけ、森の中に家を建て、10年前からは炭を使った土壌改良のビジネスも始めています。

そんな彼と話したのは健全な森林の多様性の話。


自然はそれ自体に強い森を作るためのノウハウが内在していて、ほったらかしにしておくことが、人間にとって有益かどうかは分からないけど、森にとっては健全なんだみたいな話をしてくれました。だから、あえて外から何かを持ってくることは何も必要なくて、すでに十分に多様性のある、そこに生えている植物を大切にしていればいい。

今、人間社会では、多様性が一つのキーワードになっていますよね。うちの会社は多様性を発揮した経営をしてますよと言いたいがために、外国人を雇ったり、理系の人を文系の組織にいれたり、いろいろ工夫している会社も増えています。しかし、そのコテージのオーナーと話しながら考えたのは、まずは、もっと自分の会社にいるスタッフひとりひとりの個性を知るようにしようということです。僕の会社には、現在22人のスタッフが働いているのですが、みんな様々なバックグラウンドを持ち、違う得意分野を持ち、違う夢を持つ、それだけで十分に多様性のある人々です。ひとりひとりを理解することで、生まれてくる戦略の方が、戦略に人を合わせていくよりも、ずっと成功の確率が高いと思っていますし、今のところ、その経営方針はうまくいってる感じです。

自然の中をひたすら歩くということ

タスマニアに来てから、ほぼ毎日、国立公園のような場所を数時間歩いています。


特に予備知識もなく、近くのおすすめのウォーキングトラックを探したり、Airbnbのオーナーに聞いて、歩きに行くだけです。最初の頃は仕事のこととか、将来のこととか、いろいろ考えていたのですが、こんな日々がただ続くので、だんだん考えることも少なくなってきました。

何も考えないで歩いていると、自然の鼓動というか波長というか、何か不思議なリズムを感じるようになります。流れる風の大きな動きの中でそれに反応している木々の枝や葉や草たちや、鳥や虫たちが奏でる音たちと足音だけしか聞こえない世界です。そのリズムを楽しんでいると、自然の一部になっている自分を発見します。

きっとこんな感じが、瞑想とかマインドフルネスとかで得られる感覚なんだろうなあと思いながら、毎日ひたすら耳をすましながら、遠くを見ながら歩いています。

タスマニアは人気の国立公園に行っても、あまり人に会いません。日本では山登りに行列ができるそうですが、自然とじっくりと向き合いたいなら、夏のタスマニアはオススメですよ。

みんながコアラを好きなわけ

ビクトリア州で観光というと、メルボルンに行って、そのあとグレートオーシャンロードにドライブというのが定番でしょうから、メルボルンより東側ってほとんどどんなところか分かっていませんでした。

今回訪れたのは、Raymond Islandと言う島です。ここは街をあげてコアラの保護とそれを観光資源として使っています。


朝早い時間なら、コアラも爽やかに起きているのではないかという仮説のもと、朝7時すぎに隣町のPaynesvilleと言う街から、移動距離100メートルくらいのフェリーで島に到着すると、そこからKoala Walkが始まります。コアラというと、遠くの方にかすかに見えたり、木の上の方で寝てたりと言うのしか経験がなかったので、全く期待をしていなかったのですが、歩き始めて5分で、すぐそこで、こちらを向いてるコアラを発見。朝一番のお客様くらいには挨拶しておこうという感じ。開店時のデパートで挨拶してくれる店員さんののりかも知れません。な訳ないか。


そのあとも、全部で10頭くらいのコアラをすぐ近くで見ることができたし、朝食に夢中で接近しても動じないコアラくんとも写真を撮ることができました。基本的に寝てるところしか知らないコアラの表情豊かな仕草に、普段はあまり動物とかに興味を持たない55歳の僕としても、結構ワクワクして楽しみました。



コアラって、どうしてこんなに日本人に人気があるのかを考えながら、(そもそもコアラは絶対にマーチするタイプの動物ではないし。。)歩いていると、ふと懐かしい光景が。東京の夜10時すぎの電車にかなりの確率でいる、手すりにつかまりながら酔っ払って寝ているサラリーマンみたいなコアラくん。可愛い!だけではない、こんな哀愁漂う眠り方も、日本人の多くの世代に共感を呼んでいる?のかも。