留学する街の環境

今週はオーストラリアの首都であるキャンベラにいます。この街は首都なのにもかかわらず、40万人くらいの人口しかありません。シドニーやメルボルンの10分の1の規模です。東京圏と比べたら100分の1くらいかもしれません。中心地を離れるともういきなり田舎な風景が広がります。



この街には政治的な機能と、研究機関などが集まっているだけなので、大きな産業があるわけでもなく、都市特有の様々なところから人々がやって来て膨張していく感じもありません。40万人の人口が少しずつは増えるかもしれませんが、将来に100万人の都市になることはないと思います。

ですから、都市としての面白さ、例えば、躍動感とかなんかちょっと怪しい感じの飲食店が集まっているみたいなところはキャンベラにはありません。行政で働く公務員の人たちが多い真面目な街です。(みんな、ちゃんと車は制限速度で走ってる感じです。)そんな街、つまらなそうと思う人も多いかもしれません。


でも、文化的な施設はとても充実していて、国立の博物館や科学館や図書館や美術館や植物園は、ほぼ無料で楽しめるし、いろいろなことを考える刺激を与えてくれる時間を提供してくれます。カフェやレストランも本屋さんもおしゃれで落ち着いた感じの店が多い気がします。僕は年齢のせいかもしれませんが、この街は居心地が良いです。



長くても数年の留学という限られた時間を、どのような環境で過ごしたいか?勉強だけでなく生活を楽しむことに軸を置くのか、ストレスの少ない環境で勉強に集中することに軸を置くのか?もし、勉強に軸を置くのであれば、キャンベラでの留学はありだと思います。でも、僕たちの会社は、キャンベラの大学と契約していないので(オーストラリア国立大学とキャンベラ大学)この旅が終わったら、再度訪れて、大学のマーケティング担当者と話をしてみたいと思います。

野生動物を保護する家族

今週はシドニーから約200キロ内陸に入ったBathurst(バサストみたいに発音します)という街の郊外に滞在しています。


Bathurstは1800年代初頭にオーストラリアで初めて内陸に作られた街として有名で、1850年代以降は、近隣で発見された金の集積場所として、ゴールドラッシュに沸いた街です。街並みを見ても、歴史を感じる頑丈な作りの建物と広々とした道路、美しい公園や多くのパブなど、一攫千金を狙った人たちが押し寄せていた姿が思い浮かびます。



そして、泊まっている場所は、野生動物(どちらかというと小動物)の保護活動をしている家族が経営するAirbnbのコテージです。朝と夕にやってくるワラビー、美しい夕日が眺められるベランダや、清潔で快適な部屋、どういう訳かやたらと速いモバイルのインターネット。はっきり言って、ずーっと住んでいられそうです。




この家族は、オーストラリア特有の有袋類の小動物を、狐などから守るためにフェンスで囲った広い場所を作って保護しています。同じ有袋類でもカンガルーやワラビーは大きいし逃げ足も速いので、外敵には強いのですが、ネズミくらいの小さな有袋類はどんどんその住処が狭まっているそうです。このフェンスは、寄付を募って昨年の9月に出来たばかりだそうです。この他に、オーストラリアの野生の犬であるディンゴもつがいで保護しています。


フェンスの中の小動物を彼らの活動する夜の時間に、そのオーナーと見学をしたときに話をしたのですが、こんな場所は小さい時からの夢だったそうです。少年時代から動物が好きで、動物を保護する仕事をしてきて、ついに自分のプロジェクトを家族と一緒にやれることになったと話してくれました。きっとここまでくるのに、多くの苦労をしているでしょうが、豊富な知識と、あふれる愛情で、乗り切ってきたのだと思います。今後も彼らのプロジェクトが安定して発展することが楽しみです。


サンシャインコースト大学にはAnimal Ecologyという学科があり、動物たちを愛する多くの日本人の留学生たちが勉強しているのですが、彼らのうち何人かは、将来こんな場所を作るのかなと想像して、素敵な気持ちになりました。

滞在先のサイトはこちらです。シドニーに留学している方は、お休みのときにでも訪ねてみてくださいね。

ニューカッスルの未来

今週はニューサウスウエールズ州のニューカッスルに滞在しています。シドニーに次ぐニューサウスウエールズ州第2の都市、かつては石炭の積み出し港として栄えた町です。人口は30万人。シドニーから北に電車で2時間半くらいで到着します。


僕が旅をしながら考えるのは、この街に住みたいと思うか?あるいはこの街に支店を出すことは可能か?ということです。

まずは住みたいかどうかですが、1週間の滞在で判断をするのも難しいのですが、僕が20代、30代くらいだったら、この街はすごく面白いと思いました。なぜ50代では難しいかというと、僕にはもっと静かさが必要だからです。都市というものにほとんど興味がなくなってしまったからかもしれません。でも、この街は留学に来たり、自分でビジネスを進めていきたい人にはちょうどいいサイズであったり、雰囲気であったりすると思います。一度栄えた街が、リセットされて、シドニーという大都市と良い距離感を保ちながら自分たちの街の色を出していこうという人々が住んでいる感じがしました。


そんな魅力的な街ですが、支店を出せるほどの市場を作れるかは悩むところです。留学先としてはニューカッスル大学とTAFE(公立の専門学校)だけなので、留学生たちが常に数十人いることはなさそうです。私立の良質な語学学校などが出来ると、一気に人気の出る街になると思いますが、なかなかその勇気のある語学学校は少ないでしょうね。


コロナウイルスの時代が終わって、世の中が少し落ち着いてきたら(いったいいつになったらそんな日が来るのかわかりませんが)シドニーのスタッフと一緒に、またこの街にやって来たいと思います。5年後には、オーストラリア留学の隠れた人気都市になる気がしています。

オーストラリアのニューイングランド

今週はニューサウスウエールズ州のユララ(Uralla)という街に暮らしていました。隣町はオーストラリアで一番古い地方大学のニューイングランド大学のあるアーミデール(Armidale)で、この一帯はニューイングランドと呼ばれています。


僕が30年前に留学したのがアメリカのマサチューセッツ州だったので、この「ニューイングランド」という響きには親しみが湧くので、滞在してみました。このエリアは標高が約1000メートルと、平たい大陸のオーストラリアの中でも珍しく高いところにある台地です。おかげで、現在真夏のオーストラリアですが、最高気温が20度程度で避暑地としてはすごく過ごしやすいところです。冬には霜や雪も降ることがあるそうなので、冬は寒くなくちゃという人にはもってこいの留学先です。紅葉も綺麗だそうですよ。


名前からも分かるように、この場所を最初に開拓したのがイギリス人たちで、それまでは、多くのアボリジニの方々が住んでいたので、壁画のようなものも残されています。つまりは、200年前には人工的なものは何もなく、単なるユーカリを中心とした森林だったのが、今は風景も街並みも「ニューイングランド」らしいものに変わっているのです。



そんなことを考えながら、もやもやしていると、先住民も開拓民も触ることができなかった峡谷や滝の荘厳さに圧倒されました。自然の中が心地よいのは、人間の歴史を忘れることができるから、なのかもしれませんね。

牛だって好奇心

丑年のスタートを、奇しくも牛の牧場で切ることになり、オーストラリアの元旦は初詣もレストランも開いている店もないので、ベランダから時々牛たちを眺めていました。


この牧場に飼われている?放牧されている?のは、30頭くらいなので、観察しているといろいろ気づくことが出てきます。子牛は5頭くらいいるのですが、兄弟なのか同級生なのか分かりませんが、仲良しでよく飛び跳ねて遊んでいます。でも1頭の黒毛の子牛は、ちょっと仲間外れにされていて、(ちょっと小さいので他の子牛たちが小学校3年生なら、この黒毛くんは幼稚園生という感じです。)かつ、寂しがり屋なのか、よくお母さんを探すために鳴いています。牛が鳴くのは子どもの方が多いようでした。

大人の牛たちはどうかというと、典型的な牛たちで、いつも草をゴリゴリ食べていて、それ以外に人生の目的や楽しみはないのか!と聞きたくなるくらい、草を食べ、太り、動きが遅くなり、しようがないから、また食べちゃう、みたいな子牛たちとは対照的な姿でした。

快適なゾーンでずーっと刺激もなく暮らしていると、こんな風になっちゃうよなあと、ちょっとせつなさを感じていました。


ところが、うちの奥さんが、柵に沿って散歩していたら、なんと、全ての牛たちが彼女めがけて集まってきたのです。餌はそこら中に生えているので、餌をもらいにきたわけではないし、人間が珍しいわけでもないでしょう。でも、彼らからすると、何かしらの好奇心をくすぐる状況があったのかもしれません。あるいは、普段があまりに退屈だったのかもしれません。

なあんだ、君たちも草を食べてるだけじゃ退屈なんだねと、昨年はコロナウイルスのおかげで、なんとなく縮こまっていた自分の今年の目標を「今まで以上に好奇心を持って、学んだり、無理しても動いてみる」ということにしようと思ったのでした。

リズモアで考えたこと

ニューサウスウエールズ州のリズモアは、サーフィンやヨガで有名なバイロンベイの約50キロ内陸にある、人口約3万人の街です。1800年代に林業の拠点として開拓され、その後、乳業の街として発展しました。オーストラリアのスーパーマーケットでも見かけるNorco 社のチーズ工場やアイスクリーム工場があります。



1954年にはイギリスのエリザベス女王がわざわざ訪問したくらい、オーストラリアにとっても重要な街だったことがわかります。しかし、その後は大きな発展もせず、観光はバイロンベイに取られ、そちらに資本も流れたので、リズモアはかつて栄えた街というイメージが漂っています。


その状況を克服して、新たな発展のために、1994年にサザンクロス大学を設立して若い人口を増やしています。そんな効果もあってか、街の商店街は60年代のなごりと新しい時代が混在しています。


お洒落なカフェがあったり、オーガニックな食材や商品を売っている店があったり、地元のアーティストを支援するためのギャラリーがあったりと、文化的にも面白い取り組みが行われているようです。




それでも、まだ多くの人たちは典型的なオーストラリアの田舎の人たちで、お洒落さにはほど遠いのですが、日本の田舎にも通じる雰囲気が逆に親しみを感じます。

かつて栄えた街が時代の流れに取り残された時に、どうしたらいいのかというのは、多くの日本の市町村において大きな問題だと思いますが、何かを加えて観光客を呼び込むための予算を獲得するのではなく、街を小さくしながらも生活する魅力を加えていく、新しい開発の考え方が必要になってきます。魅力的な街とネット環境があれば、都会から移り住んで来る人々は必ず増えていくと思います。ポストコロナの時代は尚更です。

僕は、このリズモアという街に楽しんで住むことができると思いますし、日本の若者たちで、将来、地元の活性化に貢献したい人は、こんな街に留学するのも、様々なアイデアを得るのに役に立ちますよ。

先が見えなくても

現在はニューサウスウエールズ州のLismore(リズモア)という街に滞在しています。先週に、僕が住んでいたクイーンズランド州からニューサウスウエールズ州に移動することは、けっこう勇気のいることでした。

コロナウイルスの感染を防ぐため、数ヶ月にわたって、州の境が封鎖されていたのが解除され、12月からまた人の行き来が自由になり、僕も安心して移動できるなと思っていたら、先週になって、シドニー近郊で感染が広がり(といっても数十人ですが。。)また、ニューサウスウエールズ側からクイーンズランドに入るためには、シドニー近郊を訪れていないことを証明しなくてはいけなくなりました。


ニューサウスウエールズ州側で、感染がさらに広がると、旅の予定を大幅に変更しなくてはならないかもしれません。すでに予定して楽しみにしていたシドニーとウーロンゴンの滞在先はキャンセルして、山側の田舎の街を通ることにしました。

でも、これがロードトリップの面白さなのだと思います。危険な情報を察知しながらも、目的地に向かって少しずつでも進んでいく経験と技術は、たぶん人生や経営などに役に立ってくれます。昔の旅人だって、宿場の噂話でこちらの道は山賊が出るらしいみたいな情報を得て、違う道を選んでいたわけです。(なんで、ここで木枯し紋次郎が思い浮かんでしまったのかは全くの謎ですが。。)

2020年というのは、世界中の人たちが、「世の中の先は全く見えない」ということをあらためて認識した年なんだと思います。それでも歩き出したほうがいいのか、宿場にとどまって様子を見ていたほうがいいのか、あるいは旅をやめた方がいいのか、幸運にも選択肢がある人は、しっかりと考えて道を選ぶべきです。

僕は、先が見えなくても、注意深く道を選びながら進んでみたいと思っています。予定外の道のりだからこそ、予定外の面白い出会いがあるのではないかと期待しています。

追体験をしない旅

今週は、ブリスベンからもゴールドコーストからも車で1時間くらいの観光地、タンボリンマウンテンの近くに滞在していました。



このタンボリンマウンテンにはギャラリーウォークという可愛い店が並んだ通りがあるので、そこには週末になると多くの観光客が訪れます。しかし、今回はそのような可愛い店には全く行くこともなく、朝の山歩きの前に、通過した時に撮ったこの写真のみ。



実は、このタンボリン・マウンテンの近くには30分から2時間くらいで歩くことができるwalking Trackが6つくらいあって、毎朝8時前くらいから、そんな山の中の散歩道を探索していました。それが、すごく良かったので、ブリスベンやゴールドコーストに留学に来る人たちは、ぜひ、観光スポットだけでなく、森林浴も楽しんで欲しいと思います。




たぶん、僕が年寄りになったことが一番の理由なのですが、商業的に装飾された世界よりも、昔から地元の人たちに愛された散歩道の方が、本質的な深い時間を過ごすことができるのです。人目を引くためにマーケティングされた世界や、インスタ映えする世界は、結局は誰もが追体験するという意味で、平凡な世界でしかありません。



今回の旅では、同じ場所に1週間は滞在する予定なので、ガイドブックに載っていない素敵な場所や人々に出会っていきたいと思っています。

山の中に住んでいこう

2011年にオーストラリアに住みだしてから、ゴールドコーストに3年、サンシャインコーストに6年とずーっとビーチまで歩ける場所に住んできました。サーフィンをする訳ではありませんが、ちょっとした時にビーチを散歩することは体の健康にも(風邪を引いたことがしばらくない)心の健康にも良いと思います。

でも、今回の旅では、意識的に山の中にも住んでみようと思っています。ビーチのかわりに森の中を歩いたり、おしゃれなカフェのかわりに地元のおじさんたちに愛されている店に行ってみたりすることで、何か違った発見ができるのではないかと思っています。

今週は、サンシャインコーストの内陸のConondale国立公園の近くに滞在しています。30年前に引退を機にこの土地を買って家を建てた今は86歳のおじいちゃんが来客用に建てたコテージ(小屋?)をAirbnbとして貸し出しているのです。エアコンなんてないので、昼は結構暑いのですが、それでもバルコニーに出ると風が通って気持ちがいいです。午後は、このバルコニーで過ごすことが多いです。


朝はいつものように早く起きて、テニスではなく山の中を歩いています。今週はかなり暑いので、10時くらいになるとひなたにいるのは辛くなるので、午前中に森の中にいるのはとても過ごしやすかったです。


国立公園には1時間とか2時間で歩けるいくつかの散歩コースもあり、平日の朝には人もほとんどいないので、自然を独占している感じでした。誰もいないので、池で泳いだりして、子どもの頃のような時間を過ごしました。


森の中が素敵なのは、様々な動物や植物などの生き物たちを感じることができること。コロナウイルスに翻弄されている人間社会から離れて、人間の歴史よりもずーっと長い期間が淡々と流れている自然の中で、自分もその一部だと感じると、つまらないことに悩まずに、今日も一日ちゃんと生きていられれば良しとしようと思うのです。

削ぎ落としていく生活

今日から、いよいよ旅が始まりました。アパートを引き払って、今まで住んでいた場所の隣町のAirbnbに滞在しています。


旅を始めるにあたって、荷物を整理して、旅に持っていく荷物をまとめたら、この写真にあるように、大きくないバッグが5つくらいで済んでしまいそうです。もし大きなスーツケースを持っていたら、2つくらいで収まるでしょうから、いっそのこと一生旅をしていても、困らない感じです。

仕事はパソコンひとつあれば問題ないし、本も思い出もすべてデジタル化できる時代では、大切なものの面影を持ちながら、ずーっと旅をしていくことができます。いつも持っていなければ気が済まない大切なものなんて、テニスラケット以外思い浮かばないので、僕は十分にデジタルな記憶で幸せでいられそうです。

僕自身の荷物はこれだけですが、奥さんの荷物や、食材とか生活用品も含めると、車のトランクや後部座席は荷物でそれなりにいっぱいになります。でも、旅を進めていくうちに、きっと少しずつ荷物は減っていくことでしょう。

それはサンテグジュペリが残した言葉のように

完璧がついに達成されるのは、何も加えるものがなくなった時ではなく、何も削るものがなくなった時である。

そんな素敵なライフスタイルに向かって、これから1年間くらいかけて、のんびりとオーストラリアを一周していきたいと思います。旅の途中で皆さんと会えることを楽しみにしています。