悩まないで準備をしよう

留学前の若者たちからの問い合わせで興味深いのは「やっていけるか心配です。」というもの。確かに、海外で暮らしたことがない人や、高校生の時は英語が得意ではなかった人が心配になるのは自然なことなのかもしれません。あるいは、留学エージェントに相談するのだから、少しくらい悩んでいた方が優しくアドバイスしてくれるかもという戦略かも知れません。いずれにしろ、問い合わせの段階ですごく心配している人が多いのは、僕たちの会社のメッセージを考える上でとても気をつけなくてはいけないことだと思っています。


僕は、人生の中で、それなりに大きなチャレンジというものをしてきましたが、心配したということはほとんどありません。それは自信があるからとかではなく、「今、悩んでもしようがないことは悩まない」という理由なだけです。心配してもしようがないことは心配しない。それだけでストレスは随分と無くなります。未来が不安なら心配しないで、できるだけ準備をすればいいだけです。

見えない未来に対して、準備をすることと心配することは似て非なるものです。留学の準備は、お金を貯めること、英語の基礎を復習しておくこと、達成可能な目標を持つこと、目標に近づかないことはやらないと心に誓うこと、このくらいで十分です。留学に飛び出す半年も前に「現地で安い携帯電話を借りられるかどうか心配」する必要はないし、そんな情報を追っかける必要もないと思います。その時間は英語の復習をして、少しでも英語のレベルを上げて現地に行くと出会える人々や経験が違ってくると思いますよ。

 

自然を感じる時間

オーストラリアは日本の20倍の面積に6分の1の人間しか住んでいないので、人の手が加わっていない自然がいくらでも残っています。それらの風景は、どうやって出来たのか分からないものもあるので、ガイドブックなどを読んでみるのですが、それでもなかなか理解できません。

人が作ったものは、たとえどんなに巨大なものであっても、どのように造られたのかなんとなく想像がつきます。必ず誰か「始めよう!」という力を持った人がいて、その組織の中で労働者や奴隷や職人たちが、様々な思いを込めて働いている姿をイメージすることができます。僕は人口の建造物を見ると、その物自体の美しさや壮大さよりも、そこにたどり着くための人間の様々な欲望やロマンやドラマに思いがいってしまうタイプです。

しかし、自然が作った芸術はその科学的な理論や背景を理解できたとしても、そのダイナミックな歴史を感じることはなかなかできません。それはそのプロセスがはるかに人間の能力を超えているからです。人間が感じられる時間軸や空間軸を超えた世界で起きている(現在でもそのプロセスの中にいるわけですが。)ことだからです。

オーストラリアに留学に来たら、できれば少ないメンバーで自然が広がる田舎を旅してみてください。どこへ行っても日本のように人は多くないので、じっくりと自然と対話できる時間があると思います。僕たちが気付かないくらいかすかに大地は動き、爽やかに風は流れ、そして信じられないスピードで地球は太陽の周りを回っていることが意識できるかもしれません。僕は、オーストラリアに来て、そんな時間を持てることがすごく幸運なことだと思うのです。

 

帰国してから考えてみること

東京に帰ってくると、できるだけ多くのお客様だった方たちとお会いするようにしています。


留学が終わって、就職が決まった方、働き出した方、結婚が決まった方など、次のステージに進んだ方たちとお話をすることは、僕たちの仕事がお客様たちの人生にとって意味があったのかを確認するための大切な時間です。仕事の価値を確認する方法があるというのは、珍しいことかもしれないし、気にしなくてもいいことなのかもしれませんが、僕にとって、その時間は多くの気づきを与えてくれます。

会社を経営していると、売り上げや利益や問い合わせの数や成約率など、業績に影響を与える指標についてチェックする習慣はつきますが、お客様一人ひとりにとっての留学の価値について考える時間はなかなか取れません。ですから、日本に帰ってきたときには、少しでも若者たちに会うことで、僕たちの方向性が間違っていないかをチェックしなくてはいけないのだと思います。大人の人々にはなかなか会えませんが、思い出話を語り合うのは、僕が隠居してからも十分に時間があると思うので、長生きしましょう。

留学が自分にとってどのような意味があったのか、人に語れるエピソードはどのようなものか、ぜひ、僕を練習台にして、語ってほしいと思います。それを考えることで、留学が終わってからも、留学に新しい価値が加わると思います。

翻弄されない生き方

オーストラリアの各都市で行っているキャリアについてのセミナーで、前回くらいから追加したスライドがこの「翻弄されない」というキーワードです。何人かの留学生たちから印象に残ったフレーズとしてフィードバックをもらったので、ここで紹介することにしました。


人生の中で、自分の力ではどうしようもないこと、つまり翻弄されてしまうことに遭遇することが必ずあります。10代の頃は素敵な女の子に翻弄されるくらいで可愛い話なのですが、社会に入るとひどい会社やどうしようもない上司に翻弄されたり、事故にあったり、自然災害で家が無くなってしまったり、日本では無いことを祈りますが、世界の中では国家に翻弄されている人々も数多くいらっしゃいます。

じゃあ、翻弄されないためにはどうしたらいいのか。まずは自分がコントロールできないことはできるだけやらない、できるだけ関わらないように、僕はしてきました。もちろん、最初からすべて思い通りにはいかないし、失敗も数多くしたわけですが、やっとこの歳になってあまり翻弄される可能性は無いかなと思っています。僕にとっては(何がリスクかは本当に人それぞれなので僕の価値観を他の人に押し付けるつもりはありません)会社は雇われるより自分の会社の方がコントロールできるし、上場するより株主は少ない方がいいし、家は買うより借りた方が余計なことは考えなくて済むし、将来役に立つかもしれない見知らぬ人たちとネットワーキングするより、お客様だけ大切にしていればビジネスはシンプルに回っていくのです。

留学は、日本でのいろいろなしがらみから離れて、自分だけの生活を見つめ直すことができる、とてもいい機会です。どんな環境に置かれても自分らしい生き方を貫いてみるチャンスです。翻弄されない留学生活、翻弄されても立ち直る力を持つ留学生活、楽しかっただけの時間よりも、きっと将来に役に立つと思います。

テニスから学んでいること

昨年、ゴールドコーストからサンシャインコーストに引っ越してから、僕の人生は大きく変わりました。

まるでテニスを始めた10代の時のように、純粋にテニスを楽しんでいます。家で仕事をするようになったので、朝6時から友人と3セット(それもシングルスの試合を)やっても、家に帰ってもまだ8時30分という東京に暮らしていたらありえないようなライフスタイルです。


そんな生活の中で出来ていく同年代の友人たちは遊んでいるというより、道を究めようとしているリスペクトしあえる仲間たちです。例えば、サンシャインコーストで1番強い友人は、週何日かヨガをして柔軟性と心を落ち着けるトレーニングを積むことが、試合中でも安定したリズムを作れる秘訣だと教えてくれました。

この年齢になって、スポーツを真面目にしている人たちはオーストラリアでもとても少ないし、スポーツをしていたとしても過去の貯金を維持することを目的としています。

しかし、ここで出会うテニスの友達たちは、そうではないのです。少しでも、今よりも上手くなりたい、そのためなら、もっと努力する。そんな人々たちです。コーチも年齢とかにお構いなく厳しく接してくれます。

仕事も、遊びも究めていくことが、いくつになっても人生を豊かにしてくれることだと思います。だから20代の人々も多くのことを経験することや楽しいだけのために時間を使わずに、留学している期間は、そこでしかできないことに(英語を究めたり、地元の趣味のサークルに入るとか)もっと時間を使って欲しいと思います。

自分らしいライフスタイル

たぶん、幸せは「自分が望むライフススタイルを実現する」ことで実感できるもので、仕事とか地位とか収入とかはライフスタイルのごく一部だと思います。

すごく収入があって、大きな家に住んで、豪華な食事を毎日食べていても、あまり幸せそうじゃない人がいるのは、自分が望んでいるライフスタイルと現実が違うからかもしれません。日本の社会は相変わらず、50年前くらいの価値観が生きていて、都市に近い場所に家を持って、大企業に勤めて、それなりに出世して、週末はショッピングして、、みたいなライフスタイルから抜け出ていない人がすごく多いと思います。


しかし、この50年で社会は大きく変わり、インターネットがあれば働けるチャンスがいくらでも作れる時代になりました。僕は、ほとんど家から仕事をしていますが、若い時に夢に描いていた田舎のホームオフィスで働く(そんな洋書の写真集とか眺めてました)ことが現実になっています。これはインターネットが無ければ絶対に実現しなかったわけで、この時代に生きることができて、本当にラッキーだと思います。

オーストラリアでは、旅をしながら仕事をしている人たちにも出会います。田舎で仕事ができるなら、旅をしながらでも仕事はできるはずです。僕も来年か再来年には、そのような旅をメインにしたライフスタイルにチャレンジしていきたいと考えています。オーストラリアに来て、さらにライフスタイルの夢の幅は広がった気がします。

「自分らしい」ライフスタイルを構築していくプロセスは、とてもクリエイティブな作業です。ちょっとだけマインドセットを変えるだけで、誰にでもチャンスがある世界です。周りの人や社会の目を気にせず、そのクリエイティブな作業を始めるためにも、旅行ではなく、海外で生活してみることは若いうちにしておくべきことだと思います。

いい友だちに出会う方法

人のモチベーションやムードは、周りの人たちから大きな影響を受けているそうです。確かに、ちょっとしたミスにも厳しい上司や同僚ばかりいる組織では、人々はミスをしないことに目標を置いて、新しいことにチャレンジすることはないでしょうし、いつも愚痴ばかり言っている集団と付き合っていると、その人も愚痴っぽい人間になっていきます。私たちが思っている以上に、周りの人の影響って大きいものだと思います。


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留学においても、その学校にどんなタイプの留学生が多いのかは、その人の留学生活に大きな影響を与えます。どんな友達たちと出会うのかは重要ですよね。


学校にどのようなタイプの留学生たちが集まるのかは、学校のマーケティングの戦略を見ればなんとなく分かります。

例えば、価格が安いことを売っている学校は、安いことを求める留学生が増え、真面目な学生の比率は下がる傾向にあります。アクティビティが盛んなことを訴求する学校には、放課後を楽しみたい留学生たちが集まります。母国語禁止ルールが厳しい学校には、真面目で少しでも英語を伸ばしたい留学生たちが集まります。つまり、自分の目的に合った学校を選ぶと、似たような目的を持った留学生たちに会うことができるということです。

よく、留学生たちの国籍割合を気にする方がいらっしゃいますが、国籍割合よりも、他の留学生たちの質というか留学に対する考え方を気にした方が、一生の友人に出会えるチャンスは高まると思います。

「空気読めない」ことが英語上達の秘訣

あなたの書く(話す)英語は、曖昧で意味がよくわからない、と多くの日本人留学生たちは語学学校の教師に指摘された経験があるかと思います。この問題は、英語の能力の問題ではなく、日本社会で慣れ親しんだハイコンテクストな僕たちのコミュニケーションスタイルの問題の方が大きいので、落ち込む必要はありません。ハイコンテクストとは、「空気読んでよ」みたいなことに代表される、社会や組織の文化を共有することで可能な、多くを語らなくても通じるコミュニケーションのことです。


では、言葉で全てを説明しなければならない、ローコンテクストな英語の世界でのアプトプット力をつけるためにはどうしたらいいのか?

すでにオーストラリアに留学に来ていて、学校に通っているなら、何かテーマを決めて作文を書き、それを先生やネイティブの友達にどんどん添削してもらうことをお勧めします。語学学校の先生はそのためにいると思ってもいいくらいです。時間がないなら、意味がわかりにくいところにアンダーラインを引いて、「?」と書いてもらうだけでもいいので、皆さんが書いている文章のどこが分かりづらいか指摘してもらいましょう。指摘されれば、どう修正すればいいかは、だいたい分かるはずです。それを繰り返していくと、必ず英語らしい文章が書けるようになります。

では、留学前で日本で英語の勉強をしている人はどうしたらいいか?ハイコンテクストな日本人のコミュニケーションスタイルが問題なら、ローコンテクストな日本語を書く練習から始めてください。つまり、分かりやすい日本語を書くという練習です。できれば、英語に訳すことをイメージしながら日本語を書いてみましょう。最初は慣れないかもしれませんが、書き続けていくとコツも掴めてくるし、英語のアウトプット力にも必ず効果が現れてきます。

僕たちは英語ができないのではなく、コミュニケーションのスタイルが違うんだと考えると、英語はそんなに怖いものではなくなりますよ。

誰かを助けてみよう

ほぼすべてのビジネスは、誰かに役に立つこと、誰かを助けることによって成立しています。
ということは、ビジネスセンスを磨くということは、人を助けるセンスを磨くと言えるかもしれません。


「誰かを助けるなんて、私には、、」と思ってる人でも、友達の恋愛の相談にのってあげたり、旅行の計画を考えたり、様々なところで誰かを助け、役に立っています。その助けている場面を分析していくことで、自分の得意な分野を活かすことを意識できるようになります。例えば、ホームパーティーで料理が得意なら食事担当、情報収集が得意なら買い物担当、デザインが得意ならデコレーションや招待状作成担当、など自然と役割分担もされているのですが、ほとんどの人は、このような自分の得意分野というものを意識していません。今日からそれを意識してみることで、自分のキャリアの方向性が少し見えてくるかもしれません。

オーストラリアに留学に来ると、もちろん自分にも困ったことは必ず起こりますが、世界中から来た友達にも困っている人がたくさんいます。そんな時に「なんか困ってることない?大丈夫?」と声をかけることは、新たな可能性を発見するための効果的なステップです。日本人では困らないようなことも、他の国の若者は困っているかもしれないし、日本人ならではの悩みも発見できると思います。

もちろん、すべての他人の悩みを解決してあげることはできませんが、「ごめん、それは無理。」と Noと言う練習もできるし、周りを巻き込んで解決することで交渉力もつくなどの副次的な効果もあるので、ちょっとだけ首を突っ込んでみて、自分に何ができるか試してみてください。そんなことを続けていくうちに、いい友人もできるし、新たな自分自身を発見できると思います。



都市に留学するということ

50歳を過ぎて、都市で暮らすということには、あまり魅力を感じなくなってしまいました。僕の場合、東京生まれ東京育ちということもあり、約50年、東京という刺激的な都市を十分楽しんだということもあるかもしれません。


しかし、自分の経験を振り返って考えてみると、20代に海外の都市に行った時の印象は今でも鮮明に覚えています。建築物、サイン、小売店、交通機関、歩いている人々、走っている車、すべてが刺激的で、新しく感じられ、そこを歩いている自分も少し国際人らしくなったのではと勘違いもしていました。

都市に留学する一番の目的は観察することです。見渡せば、観察すべきものはいくらでもあります。将来、ファッションに興味があれば、セレクトショップや歩いている人々を、食に興味があれば、レストランやカフェを徹底的に観察すべきです。うまくいっている店とうまくいっていない店の違いとか、日本に売れそうなもの、あるいは日本から売れそうなものを考えてみることは、ビジネスを立ち上げたい人にはとても良いトレーニングになると思います。

最近、物価が高いので都市には行きたくないという若者も見受けられますが、20代なんて基本的にみんな貧乏なので、自分の領域でつましく生きていくことを考えるより、その後の成功のために充実した経験、観察ができるかを考えて、留学先を選んだほうがいいと思います。消費しに行くのではなく、観察し、自分の言葉で語れる知識を増やすことが留学だということを忘れずに。