アーティストかプロデューサーか

これからの時代、仕事と言うものは、アーティストになるかプロデューサーになるかの選択しかなくなると思います。乱暴な議論に聞こえるかもしれませんが、それ以外の仕事はAIやロボットがやってくれる時代になるのです。


ただ、僕が考えてるアーティストとは、別にミュージシャンとかデザイナーだけを指すのではなく、どんな仕事でもその人なりの付加価値や仕事のやり方を披露できる人たちを大きな意味でのアーティストと定義したいと思います。企業の経営課題を数字から分析できる会計士だってアーティストだし、そのカフェで一番ファンがつくバリスタもアーティストだし、絶対にコンペで負けないプレゼンができるセールスパーソンもアーティストなのです。つまり、どんな仕事においてもアーティストを目指さないと、仕事も楽しくないし、チャンスも増えないのだと思います。

そんなアーティストが、経験を積み、責任範囲が広がっていく過程で、アーティストのままでいるか、プロデューサーになるかどうかの選択がやってきます。プロデューサーはアーティストたちが活き活きと働ける環境を作れる人です。そしてプロデューサーにとって一番大切な資質はアーティストをリスペクトしているかどうか。そんな人がリーダーとして方向性を決め、そこに向かってアーティストたちを導いていけば、どんな事業や会社も強くて美しくなっていくのだと思います。

勇気のいらない意思決定はいらない

ここ2年ほど、ほぼ毎月オーストラリアのどこかの街でキャリアセミナーをして、若者たちと話をしているおかげで、最近、毎週のようにキャリアについての相談を受けています。本当にありがたいことです。


ただ、相談と言っても、僕が就職の世話ができるほど人脈があるわけでもないし、今の就職に何を用意すればいいのかさえわからないので、ほとんどの場合、何か雑談をしている感じです。その若者の、得意なことや好きなことを聞いたり、僕が感じるその人のユニークさなどについて話しているうちに、不思議とみんな何かしらの答えを見つけ出しているようです。

ですから、僕に必要なことは、ちゃんと聞く力と、ちゃんと質問をする力で、アドバイスをすることではないのかもしれません。

ただ、一つだけ伝えるべきことがあるとしたら、どんな意思決定をする場合でも、何かしらの不安とそれを振り払う勇気が必要だということです。リスクを冒すことがいけないことだと育てられてきた人たちにとっては、とかく安心そうな道を選ぶことを望みます。しかし、勇気がいらない意思決定は、誰にでもできる平凡なレベルの話なので、自分らしい生き方を本当に求めている人にとって、それは将来大きな後悔をもたらすかもしれないというリスクをはらんでいることを忘れないでください。

人身事故な日常

約10日間の東京出張を終えて、オーストラリアに戻りました。

東京に出張すると必ず遭遇するのは地震と人身事故による電車の遅延です。


先日も夕ご飯を食べて中央線に乗っていたら、遅れてました。電車が止まって人身事故だというアナウンスがあっても多くの人はとても冷静で、自分が待ち合わせに遅れることをメールで伝え、我慢強く待っています。大学生か高校生くらいのグループは、「ありえない、遅れちゃうよ!」とか最初は文句を言ってましたが、そのあとはいつもの他愛のない話を楽しんでいました。

最近は人身事故があっても動き出すまでに15分とか20分くらいしか時間がかからないので、東京に住む人にとっては、起きることが可能性として組み込まれた日常の出来事なのです。ポイント故障も、誰かが線路にものを落としちゃうのも、人身事故も、先を急ぐ乗客にとっては電車が遅れる理由の一つであって、大差はないのだと思います。人がたぶん一人亡くなっているという想像力は意識的なのか無意識なのかわかりませんが封印してしまうのです。

そうやって、僕たちの命に対する感性はどんどん麻痺していきます。弱い人がいなくなっていくのはしようがない現実だという、強者が作った社会の雰囲気に流されないためにも、人身事故のアナウンスを聞いたら、そこで一人の命が終わったんだということを想像すべきなんだと思います。

英語は日本語の実力次第

滞在期間1年程度の留学生の場合、日本語よりも英語のほうが上手くなったり、英語で語ることのほうが自分らしくなったりすることはないと思います。(長期で海外に住むことで、それが逆転していく人もいらっしゃると思いますが、今回は一般的な留学生の話です。)


ということは、英語力を高めるためには2つのことを考えると分かりやすいです。

ひとつは、日本語とできるだけ同じことを英語で表現できるようにすること。このためには、ひたすら日本語で考えたことを英語でつぶやいたり、書いたりすることです。多くの留学生たちがSNSで日本語と英語の両方で表現していますが、これはすごく良いトレーニングだと思います。これを1年間続けていくと、だんだん日本語と英語の境界がなくなってくることを実感できると思います。また、このようなトレーニングを積んでいくと、自然と英語脳を使って日本語を組み立てる能力(英語に訳すことを前提とした日本語での文章を作るクセ)ができていくので、日本語の文章が論理的になったり、分かりやすくなる副次的な効果もあると思います。

もう一つは、日本語でも英語でもコミュニケーション力それ自体を高めるということ。オーストラリアで会う留学生の多くが、日本語においても大人との会話に慣れていない感じがします。自分の考えていることを、自分の言葉で分かりやすく、かつ魅力的に相手に伝えるという練習をする機会は日本ではなかなかないのかもしれません。ですから、留学する前に英単語を覚えることも大切ですが、日本語でのプレゼン力を高めたり、論理的に話すことも意識してみてください。皆さんの英語でのコミュニケーション力は日本語でのコミュニケーションでの実力次第だということを忘れないように。

こんなワーホリは雇いたい

ワーキングホリデーでオーストラリアにやってくる若者たちの90%(95%?)のマインドセットは、仕事といえば日本食レストランの皿洗いか、クリーニングか、ファームからスタートして、最後にはローカルのレストランで働ければいい、みたいなものです。ツアーガイドとかも含めて、ほぼサービス業での仕事を選択肢として考えているようです。


ワーホリの人たちが日本に帰って、仕事探しに苦労する原因の一つは、このほぼ全員が似たような経験をしてきているということだと思います。海外客をターゲットとした日本食レストランに就職するなら、その経験は活きるかも知れませんが、それ以外の業種であると、他のワーホリの人と同じ経験を売りにしていたら、なかなか魅力的にはうつりません。

僕の会社では、時々ワーホリの若者を各支店のアシスタントとして雇っていますが、条件は3つです。

1) クリエイティブかどうか

文章が書ける、写真が撮れる、ビデオの編集ができる、、、とにかくしっかりと考えたことや感じたことを発信できる才能やスキルや考え方を持っている人はポイントが高いです。

2) 英語ができる

英語学校で少なくとも中上級クラスにいました、というレベルでないとうちの会社での仕事はできません。

3) 人間的な魅力がある

いろいろな経験や苦労をしてきた方は、留学生のサポートをするときに多くの引き出しを持っています。僕みたいなおっさんの説教よりもずーっと強い信頼関係を留学生たちと作ってくれます。

これからの時代、どんな企業もクリエイティブな若者たちを求めています。そのスキルは、チャレンジして失敗して学んでの繰り返しで磨かれていくものです。facebook、Instagram、youtube、blog、、、、個人として発表できる場はすでに整っています。周りと同じワーホリ経験で終わるのか、オリジナルな経験を将来のために作っていくのか、人生の中で大きな1年にしてみてください。

プラン通りには絶対にいかない

留学の相談に来る若者の中で、すごく綿密に計画を立てようとする人がいます。徹底的に情報を集めないと安心できないタイプの人です。スーパーで野菜がいくらで売ってるかとか、ホームステイ先までは交通費がいくらで何分時間がかかるのか。。。こういう人って、ツアーガイドとかが天職になるのかもしれませんね。僕は今まで、旅行のツアーって使ったことがないので、自信を持ってはアドバイスできないけど。


ただ、自信を持って言えるのは、多くの情報を集めて、細かいプランは立てても時間の無駄だということです。

留学やワーキングホリデーが面白いのは、思わぬ出会いや出来事に心を揺らしながらも、自分らしく生きていく事だと思います。だから、3ヶ月で英語がペラペラになって、そのあと日本食レストランで4ヶ月働いたら、車を買ってファームに行って、その後は、、、などのプランを綿密に立てる事は、せっかくの思わぬ出来事に出会う機会を失うことにもつながりかねないのです。

プランを立てると、そのプランが達成されたかが、評価基準になり、それはすなわち予測可能な世界で生きるだけの話です。留学でも人生でも迷った時に、プランに頼るのではなく、直感に頼った方が僕はうまくいくと思ってます。だいたい、人生プラン通りですみたいな人と友達にはなりたくないですもんね。

美味しいカフェの見つけ方

オーストラリアは日本の人々が思っているより、カフェ文化が浸透しています。どの街に行っても素敵なカフェを探すことができ、そこで文章を書くのはとても充実した時間です。(実際この文章もパースのカフェで書いています。)

では、どうやって素敵なカフェを見つけたらいいのか。今日は僕がやっている方法をお教えします。しかし、これはあくまで僕のやり方なので、ぜひオーストラリアにいる人は違う方法があれば教えてくださいね。

僕はここ数ヶ月、豆乳(ソイミルク)を使ったソイラテあるいはソイフラットホワイトを頼むようにしています。それから気づいたのですが、ソイミルクというのは商品によってすごく味が違うので、どのソイミルクを使っているかはそのカフェの味に対するこだわりを測る上でとても参考になるのです。

オーストラリアで売られているソイミルクで圧倒的に美味しくて値段も高いのがボンソイという商品です。オーガニックストアやColesなどのスーパーマーケットでも買えるのですが、普通のソイミルクが1パック3ドルくらいなものがボンソイは5ドル程度します。つまり、ボンソイを使っているカフェは原価が高くても品質を上げることに気を使っている傾向があり、豆の焙煎や牛乳選びもしっかりとしているのではという仮説が成り立ち、今のところその仮説は当たっているような気がします。

ボンソイのサイトはこちら、そしてこのページでは、このボンソイを使っているカフェの検索が出来るので、カフェ選びに困った時は、このサイトを利用しています。そしてここで見つけたカフェはBeanhunterなどのカフェ検索アプリでも評価が高いカフェと一致するようです。

どんなビジネスでも、いい会社は大切なことにしっかりとこだわっていると思います。単に価格を比較するのではなく、そのこだわりのポイントを見極めることは、とても楽しい探検です。

経営って何が美しいかの問題

このビジネスを始めて間もない頃、ある留学会社の方とお話をした時に、「お客様は何もわからないのだから、学校選びをアドバイスしてあげてその対価をいただくのは当然のこと」というアドバイス?コメント?をいただいたことがあります。


それは暗に「お前の会社みたいに、何でも無料とか言って、大したサービスもしてないくせに、業界を荒らされると困るんだよね。」ということなんだろうなあと解釈して、「確かに、そうですね。」みたいな大人の対応をしたことを覚えています。何しろその頃は、本当につぶれそうだったので、それに対して反論をできるような立場でもありませんでした。

しかし、僕の会社は「日本の普通の若者たちができるだけ多く、安心して留学できるインフラを作る」というのが目標なので、学校や大学からの紹介料だけで会社を運営し、お客様には無駄なお金を一切払わせないという美学は譲れない部分で、その美しさは儲けやすいという合理性よりも上位概念だと思ったのです。

美しさを追求していても、会社はやっていけないよという方もいるかと思います。しかし、成功している会社はみんな美しさを徹底的に求めているのではないでしょうか?ここで言う美しさとは、会社の目標や夢に向かって、会社の要素がすべてデザインされていて、何の矛盾もない美しさです。例えば社員を大切にしますと言いながら、サービス残業が普通な会社とかは美しくないわけです。

おかげさまで、今は、どの学校や大学もうちの会社と働きたいと言っていただけるようになり、描いていた会社のイメージに近づいてきました。しかし、面白いのは、この会社やビジネスをデザインしていくことは、終わりがないことです。もっと美しくできないか、いつもチャレンジしていきたいと思います。

2017年のセミナーのテーマ

昨日は、シドニーのナビタス・イングリッシュの新しい校舎で、今年最初の留学に来ている若者たちへのキャリアセミナーを開催しました。学校が移転したり改装したりすると、必ず行くようにしているのですが、今回のナビタスシドニー校の新しい環境は、私立の学校としてはオーストラリアで一番ではないかと思うくらい綺麗だし、眺めもいいし、共有のスペースも広々と確保されているので、きっとこれから人気が出てくると思いました。


今年のセミナーのテーマは、「未来に向けて、留学中に考えるべき5つのこと」ということで、「社会について」「仕事について」「自分について」「幸せについて」「習慣について」という、マクロな視点から始まって、ミクロな行動に落とし込んでいくことを一緒に考えていくような流れにしています。

「社会について」では、これからさらに格差社会が進んでいくと予想される中で、支配する側と支配される側以外のポジションを考えることの可能性だったり、「幸せについて」では、自分なりの幸せの軸を持ち、これからの仕事選びなどの意思決定がその方向性に向かっているかなど、就活を成功させるノウハウなどの一般的なキャリアの話とは随分と違うので、全員に受ける内容ではありませんが、日本を飛び出して生き方を模索している若者たちにはフィットしているようです。

留学は、日本ではない環境で、どれだけ考えることができるかで、成功するかどうかが決まると僕の会社ではアドバイスしているので、これからも日本で凝り固まった価値観を少し揺さぶりながら、一生懸命考えてもらう時間を作り、印象に残るセミナーを続けていきたいと思います。

TPPより地元のおじさん

最近、我が家では、有機栽培をしている地元の農家の野菜だけを扱っているお店の宅配サービスを利用して、ほとんどの野菜や果物を買っています。宅配サービスと言っても、配送業者が指定時間に届けてくれる洗練されたサービスではなく、お店のオーナーがダンボールの箱に詰めて、のこのこ自分の車で届けてくれるという、昔ながらのスタイルです。


実はこのお店、前は小さなオーガニックショップを構えていたのですが、昨年火事にあって、お店の再建ができず、宅配方式に変えたのです。この話を聞いた地元の人たちが多く申し込んでいるようで、うちのアパートにも何人か仲間がいるようです。
この店のオーナーは、サンシャインコースト大学で環境学を教えている講師で、このビジネスに加えて、様々な場所で講演などを行っています。地元の環境保護のリーダーの仲間の農家たちの作物なので、安心して食べられるし、味も濃くて美味しいのです。

誰もがすべてのビジネスは環境によくあるべきだと考えています。しかし、いざ消費者の立場になった時に、価格の安さよりも環境や社会にとっていい買い物ができているのか。なかなか難しい問題です。僕はTPPの行方よりも、この地元の頑張ってるオーガニックショップのおじさんの将来の方がずっと気がかりです。