蚊帳の外に生きる

東京でのセミナーなどでオーストラリアについてお話しするときに、「蚊帳の外」にいる感じという表現をよく使います。地政学的にも、アメリカやヨーロッパからかなり遠く、紛争などに巻き込まれるリスクは少ない代わりに世界経済からは「資源と牛肉売ってる国でしょ」みたいに期待もされてないので脅威にも思われていないというポジションです。(オーストラリア関係者の皆さん、すみません)


しかし、そんなポジションだったからこそ、のんびりとした文化が育ち、国民の幸福度が高く、多民族国家として成功してきたのだと思います。

今、日本だけではなく多くの国で、2極化が進み、勝ち組と負け組、富める者と貧しい人たち、支配する側とされる側の争いが続いています。若者たちは支配される側に入らないために勉強し、大企業や安定した地位を目指します。また、留学業界も「グローバル人材」などのキーワードで、留学すると勝ち組に入れるかのごとくのメッセージを発信して若者たちを海外に送り出します。

僕は蚊帳の外での生活が長くなってきているせいか、そのような状況にとても違和感を覚えます。たぶん、勝ち組にも負け組にも支配する側にもされる側にも僕たちが求めている幸せは無さそうです。どちらにも属さず、蚊帳の外の幸せな国で、自分を見つめ直し、自分の足でしっかりと立てるようになり、誰にも翻弄されない人生を歩むきっかけとして、オーストラリアに留学に来て欲しいと思います。

グローバル人事のプロになる

最近、就職の相談もよく受けるようになってきたので、これからの日本で、あるいは世界でどんな仕事が必要になってくるのか、その仕事で活躍するためには、オーストラリアでどんなコースがあるのかを、発信していきたいと思います。いくつ見つけられるかわかりませんが、思いついた時に書いていこうと思ってます。今日は、その第1回。


これからの日本の企業で、必ず需要が増える職種の一つは、グローバルな案件に対応出来る人事のプロだと思います。従来の日本企業のグローバル展開では、日本の仕組みや考え方をどう現地に落とし込んでいくか、現地の労務系の弁護士なんかと考えながら、ルールを作ってきたのだと思います。ところが日本の常識は世界の非常識とか言われてしまう中で、グローバル感覚をしっかりと持った人事の人間が必要になってくるはずです。

社員の文化的なバックグラウンドもバラバラ、現地のルールを遵守しなくてはいけないけど、日本のおもてなしの文化が一番大切な価値観。。。すぐ近い将来、そんな組織をまとめていくリーダーが社長とは別に必要になってくるのではないかと思います。

もし、社会に入って3年くらい経過し、このような分野にキャリアチェンジしたい方がいたら、オーストラリアの大学院で1年で取得できるGraduate Diplomaがお勧めです。多くの大学で、人事・組織にテーマを絞ったコースを開講しています。英語で、そして多民族国家のオーストラリアで、これからの人事戦略の勉強をすることは、アイデンティティ・キャピタルを築くのに役に立つと思います。

 

大学のキャンパスを歩いてみる

都市の街中にある語学学校で勉強している留学生やワーホリの人たちの中には、生活にも慣れてきて、海外で暮らせているという達成感も得て、勉強に飽きてきたり、なんとなく勉強にやる気が出ないという人も見受けられます。海外の都市でしっかりと暮らしているという目標達成は出来たのに、それに比べて伸びていかない英語力にフラストレーションを溜めてしまうようです。


そんな人たちにオススメなのが、大学のキャンパスを歩いてみるということ。できれば、図書館にもぐり込んでみたり、カフェなどでコーヒーを飲みながら、勉強してみてください。

大学には当然ながら、学生しかいないし、彼らは勉強するためにそこに来ています。ですから、視界に入る多くの人が「勉強」を主目的に生きているわけです。そのような環境に自分を置くことで、自然と勉強する雰囲気になり、都市の雑音も無く集中でき、やる気も効率も上がると思います。

僕も時々、打ち合わせ以外でもノート片手に大学に出かけて、お茶を飲みながら経営のことを考えると、不思議に新しいアイデアが浮かんできます。素敵なキャンパスには、そんな力がある気がします。

 

 

今年度もありがとうございました

オーストラリアの会計年度は6月末で、ほぼすべてのオーストラリアの会社は今日が1年の最終日となります。日本の人たちからすると、ちょっと不思議な感じでしょうが、日本の3月決算も海外から見たら不思議です。


おかげさまで、今年度も増収増益、経営の基盤もさらに強固となりました。経営者として利益をしっかりと出すことは、当たり前のことなのですが、それと同時に今年も多くの素敵な若者たちと出会えたことが、私個人として、そして会社として一番大きな成果だったと思います。そんな魅力的な若者たちを、今後もWEBサイトで紹介していきたいと思います。

私たちの会社は、ほぼ広告費を使いません。多くのお客様が私たちのWEBサイトやブログから問い合わせをされますが、実はそれと同じくらいにお客様たちからお友達を紹介していただけています。そんな理由で広告費ほぼゼロが実現できています。よく、出願手数料も無料で、現地でのサポート費用も無料なんて信じられない、何か裏があるのでは?と疑われるのですが、理由はマーケティングにほとんどお金を使わないからしかありません。

来年度もこのような経営ができますよう、ぜひ、これからもお友達を紹介してください。マーケティング費用の予算は無いので、会社としてお礼をすることはできませんが、僕が一杯くらいおごらせていただきます。それは僕にとっても楽しい学びの時間になるはずです。

今年度は本当にありがとうございました。来年度もご支援のほど、よろしくお願いします。

新しい成功の姿

54歳になりました。自分が何歳なのかは、年齢別のテニスの試合に出場するときにしか意識しないので、もう、どうでもいいことの一つです。そんなことより、素敵な景色を見るとか、素敵な会話をしたとか、毎日ひとつでもいいのでいい時間を過ごすことを重ねていくことが大切だと思うようになりました。


会社の経営については、6月に会計年度が終わる今年度も順調で、5年連続の増収増益となります。スタッフもやりがいのある仕事を楽しんでいるので、誰も辞めません。20名の会社としては、十分な成功をしています。それならこの好調な波に乗って、日本での支店を拡大したり、スタッフを増やしたりしてさらなる成長をしようと考える経営者もいるかと思いますが、僕は違う道を行こうと考えています。

そのために、今までとは質の違った成長の定義や成功観を持ちたいと考えています。それは成功を数字だけで測ることではなく、お客様ひとりひとり、スタッフひとりひとりの幸せに、ちゃんと向き合っている会社でいるかで測られたいということです。綺麗な言葉で飾るマーケティング戦略より、ひとりの苦労した留学生の体験談を大事にしていきたい。10人の成功しなかった留学生からの売上より、1人の成功した留学からの売上を評価したいと思っています。

僕もそれなりにこの留学業界で長く働いていますが、なかなか志の高い人に出会えない。みんな数字のことしか考えていない。ビジネスなんだから数字が全てという考え方ではなく、お客様ひとりひとりの最高の経験の一部として僕たちの会社が記憶されることを新しい成功の姿として定義して、そこに向かってベストを尽くしてみたいと思います。

 

 

真実を探すために

留学エージェントにとって、一番起きてはいけないクレームの一つは「日本で聞いていたことと違った」というものです。

私たちのオフィスにも、他の留学会社で学校を申し込んでオーストラリアにやってきたけど、聞いていた状況と違ったということで、学校変更の相談にいらっしゃる人が時々います。先日はある学校から何人も同じように学校を変えたいという若者たちがやってきて、相談をしていました。その学校は私たちとは契約が無く、実態はよくわかりませんが、マーケティングだけ上手い学校というのも中にはあるのだと、ある意味感心してしまいます。


リアルな情報を伝えるのが、学校を紹介するエージェントの仕事でしょ!と多くの人が考えるし、私もその通りだと思うのですが、なかなかこれが簡単ではありません。なぜなら、留学エージェントが持つ情報は、ほとんどが学校のマーケティング部門からの情報だからです。その情報は事実であっても、マーケティング用の情報です。全てを網羅しているわけではありません。

それなら、定期的に学校に見学に行けばいいということになります。訪問すると学校の雰囲気は分かりますが、それでも十分ではありません。分かるのは本当に雰囲気だけで、真面目な留学生が多そうだとか、レベルの高いクラスには日本人が少なそうだ、などの見て分かる範囲の事実に気づくだけです。

現地にいる私たちは、いつも学校の情報を留学生の方と直接会い、彼らの言葉からリアルな情報を得ています。この学校のこの先生はいいけど、この先生はイマイチとか、ちょうどある大学からの研修旅行のやる気のない学生が来ていて避けるのが大変、などの学校からは絶対に聞けない情報を聞いて、社内で共有したり、学校のスタッフにもフィードバックをしたりしています。

ですから、うちの会社では留学生とお茶を飲むことは奨励しているし、会社で費用も負担しています。留学生の皆さん、お茶が飲みたくなったら僕に連絡してくれると、無料でお茶、たまにビールが飲めると思いますよ。

 

ロックでいなくちゃ

王より長嶋、ベッケンバウアーよりクライフ、ボルグよりマッケンロー、ビル・ゲイツよりスティーブ・ジョブズのファンになってきた僕としては、会社を経営するならロックじゃなくちゃいけないと思っていました。



ですから、8年前に会社を引き継いだ時点では売り上げの40%ぐらいを占めていた、日本の留学エージェントさんたちの現地サポートオフィスという下請け仕事は3年前には全て終了し、自分たちのお客様だけにベストを尽くすという環境を作りました。誰か他の人や他の会社に頼らなくてはいけないビジネスモデルはロックじゃないし、かつ将来のリスクだと考えたからです。

ところが、どんどん業績が安定し、会社の評判が知られてくると、業界でのお付き合いみたいなことや人的なネットワークについても考えなくてはいけないことが増えてきました。20人といえども社員を抱えるリーダーとしては、社長としての「大人な」仕事もすべきなのでは?ということです。

だけど、そういう仕事って全然ロックじゃない。お客様じゃない人たちに気を使ったり、話すこともそんなにないのにパーティーみたいなところに行くのは(これは日本でもオーストラリアでもあります)ちょっと苦痛です。オーストラリアの年度末は6月で、6月17日にゴールドコーストで行う全社会議で来年以降の方向性について社員に話をするので、初心とか原点のことを考えていたら、ふと、最初のスライドは

「ロックでいなくちゃ」

にしたいと思ったのでした。来年度も、お客様のことだけ考え、僕自身は相変わらずサンシャインコーストの田舎に引きこもり、会いたい人にしか会いに行かないという生活を続けたいと思います。

若い人たちと話していると、会社に入った後の人づきあいで悩んでいる人も多いのですが、社内の人間関係なんて気にしないで自分の時間を大切にと伝えています。

 

 

東京に足りないもの

僕は普段はオーストラリアの田舎に暮らしていて、年に数回東京に出張する生活をしています。

東京に帰ってきて最初の数日とまどうことが、出会う人たちに表情が無いこと。電車に乗ってくる人は座ったらすぐに寝るし、立っている人はすぐにスマホを取り出すので、人と目が合う事はありません。たとえ目が合ったとしても、一瞬の気まずさとともにすぐに目をそらしたり、目をつむったりします。


僕が住んでいるサンシャインコーストの街では、人がすれ違うときにはほぼ「ハロー」とか「ハイ」と挨拶をして、微笑みます。子どもから老人まで、人種も関係なく、それが普通の習慣になっています。

東京でそんなことをしたら1日中挨拶しないといけないのは分かりますし、そんな人は怪しいだけなのも分かっています。

それでも目があったら会釈する、ちょっと微笑んでみる、そんなことが普通になったら、東京は随分と住みやすくなるはずです。

セミナーを続ける理由

今年に入って、オーストラリアの各支店において「キャリアセミナー」というものを行っていて、すでにシドニー、アデレード、メルボルン、パース、ブリスベン、ゴールドコーストと、弊社の6支店すべてで開催しました。今後も、支店に出張するときには継続的に行っていこうと考えています。

セミナーの内容は就職活動をどう成功させるかというものではありません。その分野はプロの方がいらっしゃるので、そのような方たちにお任せして、僕のメッセージはもっと基本的な仕事とは?とかキャリアとは?とか自分らしい人生って?などのトピックでお話をしています。


留学会社は、お客様に海外の学校に通学してもらえば、学校から紹介料が入り、ビジネスとしては完結します。多くの留学会社が、海外に留学生を送ってしまえばそれで終わりという対応になるのもうなづけます。しかし、留学が成功するかしないかは、現地でのカルチャーショックを乗り越えたり、マインドセットを修正したりと、海外でどう成長していくかが鍵になります。

おかげさまで、ビジネスとしては安定した成長ができるようになり、無理をして利益拡大をするのではなく、ご縁のあった若者たちが、留学をきっかけに本当に人生に成功したり幸せになったりできるように、まずは僕の時間を利益ゼロでも投資してみることにしました。そして、始めてみると、このセミナーをきっかけに若者たちと本音の話ができることは、僕にとって一番の楽しみであり、かつライフワークになってきた感じがします。

 

変わりたい vs 変わりたくない

多くの人たちの留学を考えるきっかけは「自分を変えてみたい」というものです。「もっと英語が話せる自分になりたい」「狭い世界ではなく、世界中に友だちを作りたい」「将来につながるかもしれない勉強や資格を海外で学びたい」などなど、日本での現状からの脱却のために世界に飛び出すことを決意します。


ところが、不思議なもので、留学に来て失敗というか諦めていく人たちは多くの場合「変わりたくない」症候群によるものです。「日本ではこんなことありえない」とか「私にこの学校は合ってない」とか、ちょっとマインドセットを変えるだけで解決するような話も「変わりたくない」人たちにはとても難しい問題のようです。

しかし、よーく考えてみると、この問題は自分自身にとっても、組織にとっても、社会にとっても、いつも問われていることだと気づきます。僕自身が、実は「変わりたくない」側に簡単に行ってしまうタイプであることは、よく分かっています。だからこそ、責任から逃げられない会社の経営者のポジションや、セミプロみたいなレベルでテニスをしていた選手たちと戦うトーナメントに身を置かなくてはいけないのです。そこに身を置くことで、「変わりたい」と言う気持ちが「変わりたくない」に勝つようになり、「変わるしかない」になります。

この境地に達した人は、ほとんどの人が満足いく成果と満足いく留学を経験します。本当に、マインドセットがすごく大きな影響を与え、だからこそ、現地で相談に乗っているスタッフのトレーニングは欠かせないのだと思っています。