新しい活躍の場を探すために

2016年は各都市でほぼ毎月、キャリアセミナーと題して、お客様に仕事の選び方や留学中に気をつけたほうがいいことについてお話ししてきました。今週はブリスベンで今年最後のセミナーを開催して20名を超える若者たちと会うことができました。


半年や1年間の長期語学留学や休学留学、そして高校を卒業してオーストラリアの大学に進学した若者たち、僕の会社の留学生たちはこのような方たちが多いので、日本の平均的な若者たちに比べてずっとしっかりしています。しかし、そんな勇気を持った若者たちを不安にさせるくらい、日本の社会は見通しにくく、外から帰ってきた人たちに冷たい雰囲気を醸し出しているようです。

ですから、僕のメッセージは自信を持って、目の前の勉強に集中しようねということです。そもそも、日本の社会や教育に疑問を感じて海外に飛び出して努力しているのに、帰るときにまた日本サイズに合わせるべきかなんて考える必要はないのです。成長した留学生たちは、成長した分日本においても違う出会いや機会が待っています。その機会に巡り合うためには、少し人と違った戦略的な考えと新しい居場所に飛び出す勇気なんだと思います。

ただ、それは口で言うのは容易いですが、日本から遠く離れて頑張っている若者一人ではなかなか気づくことはできません。僕の会社の現地サポートというのは、生活を始めるためのマニュアル的なサポートだけではなく、できるだけ多くの留学生一人一人に向き合いながら、アドバイスをして、留学したすべての若者が自分らしい人生を歩んでもらうためにあるんだと思っています。

記憶に残る旅に出かけよう

メルボルンへの出張のついでに、週末は車を借りて、グレートオーシャンロードに2泊3日の旅をしてきました。メルボルン市内から、有名な「12使徒の岩」までは250キロなので、日帰りドライブも可能なのですが、今回は海沿いの町で休憩しながらのんびりとした時間を過ごしました。


実は若い頃は、僕はあまり旅をしたことがありませんでした。テレビや雑誌などで見たことがある場所にわざわざ行くことの価値がよくわからなかったし、誰かに誘われることもなかったし、そもそもお金が無かったので、旅をする余裕もないので興味もわかないという感じでした。


旅の意味が見出せるようになったのは、出張などで世界の街を一人で歩くようになってからです。旅人として、つまりはその街の異邦人として、少しの距離と敬意を持って街や人々を眺めたり、話したりすることで、そこで育まれている普通の小さな幸せを感じることが、僕にとっては旅の一番の楽しさです。


今回もグレートオーシャンロードの宿の元教師だったおじさん、チョコレート屋さんのおじさん、チーズ工場のおじさん、みんな素敵な話をしてくれました。


だからこそ、旅はゆっくり出かけましょう。日帰りで行けるところでもその街に泊まってみましょう。観光スポットをいくつ見たかよりも、カフェや宿の人とちょっとした会話の方がずっと記憶に残ると思います。

 

よく言えばミニマリスト?

動物保護の仕事をし、かつベジタリアンの娘の影響もあり、家ではほとんどお肉は食べません。時々出張先や外出先で、お客様や社員たちと食事をするときには食べたりしますが、動物というものを、最近は意識してしまいます。別に動物愛護協会にもグリーンピースにも所属していませんが、無理してそんなにいっぱい動物を殺して食べなくても(食べ物の半分は捨てられているそうですし)、僕は今のところ元気だし大丈夫、っていうレベルです。


一度、動物の命をいただくということに意識が向くと、生活用品も気になります。なんでビジネスシューズって革靴なの?とか、ベルトってなんで革でテカテカしてるわけ?とか、財布は革だと味が出てくるってどういうこと?みたいなことが気になってしまうわけです。

20代の頃、文具メーカーで革製のシステム手帳のバインダーを何万冊?も作った僕が言えた話ではないのですが、最近は一切革製品も持っていません。ナイロン製のスニーカー、プラスチック製の財布、布製のベルト。スーツも持ってないし、どう見ても社長の格好ではないので、公の場を避けていたら、最近は呼ばれることも無くなりました。

僕たちは、いつも周りの目を気にしながら生きています。というか、そのように教えられ、育てられてきました。営業マンはビシッとスーツを着こなし、モテたければファッション誌でオススメのアイテムを身につけることで、相手に認められると信じて買い物にいそしみます。しかし、その投資対効果は思ったほどではなく、最近では周りの目を気にしないリーダーたちの評価も高まっています。

ということで、留学生の皆さん、プラスチックの財布でも笑わないでくださいね。

グローバル人材にはなるのでなく、認められること

英語ができればグローバル人材になれるわけではない、ということはもう誰でも分かっています。にもかかわらず、世の中には相変わらず「グローバル人材=英語」という文脈が多く見受けられます。


そもそも、「何かを学べばグローバル人材になれる」という発想がおかしくて、大切なことは「認められていくプロセス」なんだと思います。

例えば、オーストラリアの大学でチュートリアルという少人数制の日本で言えばゼミみたいな授業があります。オーストラリア人の学生を中心に何人かの留学生が入ったその集団で、日本人は最初はシャイなことも災いしてなかなかグループの中で存在感を発揮するのは難しいです。しかし、少人数だからこそ、意見も求められ、いい意見を話し、少しずつリーダーシップを発揮し、プレゼンの構成を考え、やるべきことをリストアップし、、、なんてことをしているうちに、その集団で確固たるポジションを獲得できるようになります。このようなプロセスが、グローバル人材になるということなのです。

外国人の中で、自分をアピールしていく経験、ポジションを獲得していく経験、それこそが将来に活きてくる留学の醍醐味だと思います。英語力はそのための必要条件の一つに過ぎません。大学生の方だったら、ぜひオーストラリアの大学で学部聴講をしてほしいし、もし英語力が足りないのであれば、地元のコミュニティーなどに入って、自分の存在感をアピールする経験をしてほしいと思います。それがグローバル人材になるためのスタート地点です。

留学カウンセラーに欲しい人

僕の会社は約20人の小さな会社ですが、月に1人くらいのペースで、弊社で働いてみたいという問い合わせをいただきます。特にオーストラリアに留学をされた方からの連絡が多いので、オーストラリアでの留学がその人の人生にとってとても有意義なもので、その経験を多くの人に伝えたいという志を持たれることはありがたいことだと思っています。


残念ながら、弊社では募集しているタイミングはとても少ないのですが、どのような方を求めているかを書いておくことで、留学後の就活にヒントになるかもしれないと思ったので、ご参考まで。

学歴・英語力

ビジネスの場で使える英語力があること。TOEICが900点でなくてはいけないということはありませんが、ケンブリッジ英検のFCE以上は欲しいところです。使える英語の試験という意味ではケンブリッジ英検が総合力を測る上で、一番いいと思っています。それから、英語でも日本語でも同じですが、品のあるコミュニケーションができることがビジネスでは大切だと思います。

オーストラリアの大学や大学院を卒業した方は魅力的ですが、次に書く、社会人経験のある方が重要だと思っています。ただ、オーストラリアでしっかりと苦労して学んだ経験があり、それを将来のお客様に語れることは必須です。

社会人経験があり、苦労し、かつ成功体験のある方

私たちのお客様の半分は社会人の方のキャリアチェンジであったり、ワーキングホリデーの方々です。そのような方にアドバイスできる、社会人経験のある方(できれば日本で)で、小さなことでもいいので自分らしさを発揮して何か成功体験をされた方を求めています。

日本の幾つか(多くの?)企業は人を活かすことができない経営をしていますが、どんな環境でも自分なりに工夫をしてきた方が成功すると思いますし、人間としても魅力的なのだと思います。

発信する力

うちの会社で一番必要なスキルは、発信する、あるいは市場とコミュニケートするスキルです。WEBサイトの記事やブログを書いたり、体験談のインタビューをビデオで撮影したり、大学のマーケティング担当者とマーケティングのアイデアを作り、それをWEBやSNSで発信できる力です。

「しつこくて、うざい」くらいの営業力を求める競合の留学会社もあるみたいですが、うちでは営業力よりも発信力を重視しています。

すでに今の時代は事務処理能力よりも、正しい発信力がある人を求めている企業が多いと思いますし、それを求めていない企業は微妙なんだと思います。ですから、世の中に対して正しい姿勢で発信する習慣を留学中に築くことは、発信したくなることが山ほど有る留学中に一番しなくてはいけないことなんだと思います。

悩まないで準備をしよう

留学前の若者たちからの問い合わせで興味深いのは「やっていけるか心配です。」というもの。確かに、海外で暮らしたことがない人や、高校生の時は英語が得意ではなかった人が心配になるのは自然なことなのかもしれません。あるいは、留学エージェントに相談するのだから、少しくらい悩んでいた方が優しくアドバイスしてくれるかもという戦略かも知れません。いずれにしろ、問い合わせの段階ですごく心配している人が多いのは、僕たちの会社のメッセージを考える上でとても気をつけなくてはいけないことだと思っています。


僕は、人生の中で、それなりに大きなチャレンジというものをしてきましたが、心配したということはほとんどありません。それは自信があるからとかではなく、「今、悩んでもしようがないことは悩まない」という理由なだけです。心配してもしようがないことは心配しない。それだけでストレスは随分と無くなります。未来が不安なら心配しないで、できるだけ準備をすればいいだけです。

見えない未来に対して、準備をすることと心配することは似て非なるものです。留学の準備は、お金を貯めること、英語の基礎を復習しておくこと、達成可能な目標を持つこと、目標に近づかないことはやらないと心に誓うこと、このくらいで十分です。留学に飛び出す半年も前に「現地で安い携帯電話を借りられるかどうか心配」する必要はないし、そんな情報を追っかける必要もないと思います。その時間は英語の復習をして、少しでも英語のレベルを上げて現地に行くと出会える人々や経験が違ってくると思いますよ。

 

自然を感じる時間

オーストラリアは日本の20倍の面積に6分の1の人間しか住んでいないので、人の手が加わっていない自然がいくらでも残っています。それらの風景は、どうやって出来たのか分からないものもあるので、ガイドブックなどを読んでみるのですが、それでもなかなか理解できません。

人が作ったものは、たとえどんなに巨大なものであっても、どのように造られたのかなんとなく想像がつきます。必ず誰か「始めよう!」という力を持った人がいて、その組織の中で労働者や奴隷や職人たちが、様々な思いを込めて働いている姿をイメージすることができます。僕は人口の建造物を見ると、その物自体の美しさや壮大さよりも、そこにたどり着くための人間の様々な欲望やロマンやドラマに思いがいってしまうタイプです。

しかし、自然が作った芸術はその科学的な理論や背景を理解できたとしても、そのダイナミックな歴史を感じることはなかなかできません。それはそのプロセスがはるかに人間の能力を超えているからです。人間が感じられる時間軸や空間軸を超えた世界で起きている(現在でもそのプロセスの中にいるわけですが。)ことだからです。

オーストラリアに留学に来たら、できれば少ないメンバーで自然が広がる田舎を旅してみてください。どこへ行っても日本のように人は多くないので、じっくりと自然と対話できる時間があると思います。僕たちが気付かないくらいかすかに大地は動き、爽やかに風は流れ、そして信じられないスピードで地球は太陽の周りを回っていることが意識できるかもしれません。僕は、オーストラリアに来て、そんな時間を持てることがすごく幸運なことだと思うのです。

 

帰国してから考えてみること

東京に帰ってくると、できるだけ多くのお客様だった方たちとお会いするようにしています。


留学が終わって、就職が決まった方、働き出した方、結婚が決まった方など、次のステージに進んだ方たちとお話をすることは、僕たちの仕事がお客様たちの人生にとって意味があったのかを確認するための大切な時間です。仕事の価値を確認する方法があるというのは、珍しいことかもしれないし、気にしなくてもいいことなのかもしれませんが、僕にとって、その時間は多くの気づきを与えてくれます。

会社を経営していると、売り上げや利益や問い合わせの数や成約率など、業績に影響を与える指標についてチェックする習慣はつきますが、お客様一人ひとりにとっての留学の価値について考える時間はなかなか取れません。ですから、日本に帰ってきたときには、少しでも若者たちに会うことで、僕たちの方向性が間違っていないかをチェックしなくてはいけないのだと思います。大人の人々にはなかなか会えませんが、思い出話を語り合うのは、僕が隠居してからも十分に時間があると思うので、長生きしましょう。

留学が自分にとってどのような意味があったのか、人に語れるエピソードはどのようなものか、ぜひ、僕を練習台にして、語ってほしいと思います。それを考えることで、留学が終わってからも、留学に新しい価値が加わると思います。

翻弄されない生き方

オーストラリアの各都市で行っているキャリアについてのセミナーで、前回くらいから追加したスライドがこの「翻弄されない」というキーワードです。何人かの留学生たちから印象に残ったフレーズとしてフィードバックをもらったので、ここで紹介することにしました。


人生の中で、自分の力ではどうしようもないこと、つまり翻弄されてしまうことに遭遇することが必ずあります。10代の頃は素敵な女の子に翻弄されるくらいで可愛い話なのですが、社会に入るとひどい会社やどうしようもない上司に翻弄されたり、事故にあったり、自然災害で家が無くなってしまったり、日本では無いことを祈りますが、世界の中では国家に翻弄されている人々も数多くいらっしゃいます。

じゃあ、翻弄されないためにはどうしたらいいのか。まずは自分がコントロールできないことはできるだけやらない、できるだけ関わらないように、僕はしてきました。もちろん、最初からすべて思い通りにはいかないし、失敗も数多くしたわけですが、やっとこの歳になってあまり翻弄される可能性は無いかなと思っています。僕にとっては(何がリスクかは本当に人それぞれなので僕の価値観を他の人に押し付けるつもりはありません)会社は雇われるより自分の会社の方がコントロールできるし、上場するより株主は少ない方がいいし、家は買うより借りた方が余計なことは考えなくて済むし、将来役に立つかもしれない見知らぬ人たちとネットワーキングするより、お客様だけ大切にしていればビジネスはシンプルに回っていくのです。

留学は、日本でのいろいろなしがらみから離れて、自分だけの生活を見つめ直すことができる、とてもいい機会です。どんな環境に置かれても自分らしい生き方を貫いてみるチャンスです。翻弄されない留学生活、翻弄されても立ち直る力を持つ留学生活、楽しかっただけの時間よりも、きっと将来に役に立つと思います。

テニスから学んでいること

昨年、ゴールドコーストからサンシャインコーストに引っ越してから、僕の人生は大きく変わりました。

まるでテニスを始めた10代の時のように、純粋にテニスを楽しんでいます。家で仕事をするようになったので、朝6時から友人と3セット(それもシングルスの試合を)やっても、家に帰ってもまだ8時30分という東京に暮らしていたらありえないようなライフスタイルです。


そんな生活の中で出来ていく同年代の友人たちは遊んでいるというより、道を究めようとしているリスペクトしあえる仲間たちです。例えば、サンシャインコーストで1番強い友人は、週何日かヨガをして柔軟性と心を落ち着けるトレーニングを積むことが、試合中でも安定したリズムを作れる秘訣だと教えてくれました。

この年齢になって、スポーツを真面目にしている人たちはオーストラリアでもとても少ないし、スポーツをしていたとしても過去の貯金を維持することを目的としています。

しかし、ここで出会うテニスの友達たちは、そうではないのです。少しでも、今よりも上手くなりたい、そのためなら、もっと努力する。そんな人々たちです。コーチも年齢とかにお構いなく厳しく接してくれます。

仕事も、遊びも究めていくことが、いくつになっても人生を豊かにしてくれることだと思います。だから20代の人々も多くのことを経験することや楽しいだけのために時間を使わずに、留学している期間は、そこでしかできないことに(英語を究めたり、地元の趣味のサークルに入るとか)もっと時間を使って欲しいと思います。