2016年を迎えて

明けましておめでとうございます。

サンシャインコーストという田舎に引っ越して約9ヶ月、ここでの年末年始の休暇は、テニスをするか本を読むかビーチを散歩するかぐらいしかやることがない、日本の師走とは対照的なライフスタイルでした。
IMG_2475 (1) この1週間に読んだ(読んでる)本は、セス・ゴーディンの” What to do when It’s your turn”、マルコム・グラッドウェルの” David and Goliath”、キャロル・ドゥエックの”Mindset”です。後ろの2冊はすでに日本語訳も出ているので、興味のある方は読んでみてください。僕はこのような本に代表される、成功するかどうかはその人の考え方や戦略次第だよねというタイプの話が好きですし、実際にそう思っています。

いい教育、お金持ちの家庭、いい大学、いい会社、そんなことは若干のアドバンテージはもたらしてはくれますが、成功や幸せに自動的には導いてはくれません。そんなこと大人はみんなわかってるのに、日本の社会は一生懸命若者たちを昔ながらの固定概念にはめようとしていきます。実際はそんなアドバンテージは簡単にひっくり返せるのに、植えつけられてきたマインドセットのおかげでなかなか大胆な道を選べない若者たちにも多く出会います。それでも自分の力で(大学の語学研修なんかじゃなく)海外に飛び出してみたいという若者たちに、どうしたら成功や幸せに近づけるのかの考え方のアドバイスをしていきたいと思います。

2016年もさらに多くの若者たちとじっくりと話す機会を作り、ビジネスでは「オーストラリア留学」市場でのNo1のポジションをさらに強固なものにして、ご縁のあったすべての人に少しでもお役に立てればと思います。

しばらくは高待遇が続きそうな仕事

先日ニュースを見ていたら、平均給与が高い業界として、今までは鉱業関連が一番だったけれども、それに急激に追いついているのがサイバーテロ対策を中心としたITセキュリティー業界だそうです。なんとその平均給与は年間13万ドル。日本円で1200万円弱です。これが平均給与で、かつこの業界には年寄りはいないので、若者にとっては一番給料の高い業界になるそうです。また、全く人が足りていないようで、しばらくは優秀な人たちの争奪戦が繰り広げられるだろうと報じていました。
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きっとこれからは各大学もそのような専攻を充実させるとは思いますが、現時点でサイバーテロ対策という専攻があるのは、パースの2大学。詳しい内容はこちらをご覧ください。

きっとこのような業界は10年くらい働けば疲れてしまうのかもしれませんが、その間に十分に稼いで、そのあとはビーチの近くに小さなカフェでも始めるなんていうのは悪くないアイデアですね。そんな大胆な発想の若者たちに会えることを楽しみにしています。

社会に出るのか会社に入るのか

私たちの世代では、大学を卒業して社会に出ることと、会社に入ることは、ほぼ同義語であって区別して考えることはありませんでした。

しかし、ソーシャルネットワークという新しい社会が出現してから、その社会に出るのか会社に入るのかはその人にとって、どちらかを選ばなくてはいけないものになってきている印象があります。端的な例を言えば、多くの若者が会社に入るとSNSの社会から消えていきます。それは、会社が「ソーシャルな世界」で活動することを禁止しているところもあるでしょうし、忙しくてそれどころではなくなっていく場合もあるのかもしれません。
IMG_0619 社会人としてはずいぶん先輩になってしまった僕からのアドバイスは、これからの時代はどんなに忙しくても、ソーシャルな世界にはできるだけ、出ていた方がいいということです。プロフィール写真はペットの写真ではなく自分の顔で、過去の馬鹿騒ぎの写真は削除した方がいいかもしれませんが、それよりも今の自分の考えや生活をいかに社会に表現していくかを考えていくことは、人間として成長するためにもいいことなのだと思います。昨今言われるSNS疲れにならないように、ソーシャルな世界には一定の距離を持って、発信者としてのポジションを継続していくのは大切な戦略です。

会社に入って、社会に出てこなくなってしまうと、居心地がよく自分を守ってくれる会社にさらに依存するようになります。しかし、それは幻想であって、社会に正しく発信できない人はかなりの確率で40歳50歳で会社には必要のない人になってしまいます。その年代でいきなり社会に放り出されるのは、本当に悲劇です。これからは、いつも自分と社会と(そして会社も)の関係を注意深く考えながら、発信を続けていくことが豊かな人生の鍵になっていく時代なのだと思います。

成長戦略か延命戦略か

選挙が終わった日本のニュースを読んでいると、今後の日本の成長戦略は何か?というトピックが多いようですが、議論されていることが、成長戦略なのか、時間稼ぎのための延命戦略なのかは注視していかなくてはならないと思います。

企業を経営する身となってみると、継続して成長するためには数多くの手を打たなくてはならず、その分失敗する事は多くなります。しかし、その小さな失敗たちが大きな成功のネタになるので、新規事業がどんどん生まれる企業文化を作る事はとても重要な戦略のひとつです。しかし、日本社会はとかく失敗に対して「いかがなものか」と弱いものいじめにいそしむ人たちも多く、それによって本当の成長戦略よりも失敗の無いあたりさわりの無い延命戦略になりがちです。そんな空気が浸透しているので、若者たちのマインドもリスクを背負うよりも、現状維持を選ぶ傾向にあるようです。
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そして、それは留学生にも影響していて、失敗を恐れずに成長戦略を持ち続けている人と、居心地のいいオーストラリアにいるための延命戦略に変わってしまっている人がいるのです。はじめは自分の成長のために留学をして、様々な事にチャレンジして、ときには苦しい思いをしてもなんとか乗り越えて世界に羽ばたいていこうと思っていたのに、知らぬ間にオーストラリアにいることが一番の目的になってしまって延命だけをしている若者をたち。延命はもうそこでしか生きれなくなってしまうから、日本にも怖くて帰れない。そんな若者たちが世界各地の留学に人気のある街には必ずいます。

しかし、そんな若者たちと話してみると、実はそのような生活に満足はしていなくて、どう変えたらいいのかのキッカケがつかめないだけ。そんな若者たちにも、役に立てるのが、現地にいる留学会社の面白さだと思っています。

社会の変化は待っていられない

僕たちの世代は、社会に入るときに「新人類」と呼ばれ当時の大人たちには理解できなかったようですが、その僕たちも大人(それもかなりの)になって、この30年くらいを振り返ると、ほとんど日本の社会が変わっていない事に唖然とします。もちろん、30年前に比べたら女性の社会進出も、海外に行く人々の数も、いくつかの局面では大きく改善もしているでしょうが、なんか社会を包んでいる空気みたいなものは、ほとんど変わっていない感じがします。
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私にとって一番居心地が悪いのは、大事な事を先送りしながら、多くの人たちが何かを待っているということです。誰かが、それが力強い政治家なのか、正義の味方なのか、優秀な官僚たちなのか分かりませんが、社会を変えてくれるのではないかと待っている、あるいは「待っててもしようがないよね」とブツブツ言いながら結局そこに留まっている人々が、日本の空気をずーっと作っています。

希望的観測の元に、長期的な視点で将来を考えれば、必ず社会は良くなっていくでしょう。毎日毎日少しずつ良くなっていって、いつか素敵な社会ができることでしょう。しかし、皆さんはその日まで待てるのでしょうか?皆さんの子どもたちはその日まで待てるのでしょうか?僕は自分の子どもたちの未来を考えたときに待てませんでした。だから子どもたちだけでも、世界というフィールドで生きられるようにと思い、オーストラリアで勉強させました。それから15年経って、「グローバル人材」とか言う言葉とともに、社会が追いついてきた?感じがします。

社会という時の流れと、一度しかない自分の人生の時間の流れはきっと整合しないと思います。それでも待ち続けるか、リスクも考慮しながら動き出すのかは人生における大きな課題です。

 

就職のときに考えたこと

『で、僕がそこで何をするかっていうとさ、誰かその崖から落ちそうになる子どもがいると、かたっぱしからつかまえるんだよ。つまりさ、よく前を見ないで崖の方に走っていく子どもなんかがいたら、どっからともなく現れて、その子をさっとキャッチするんだ。そういうのを朝から晩までずっとやってる。ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ。たしかにかなりへんてこだとは思うけど、僕が心からなりたいと思うのはそれくらいだよ。かなりへんてこだとはわかっているんだけどね。』    The Catcher in the Rye   J.D.サリンジャー 村上春樹訳
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By Arenamontanus


たぶん、私たちの世代はほとんどの高校生がこの本を読み(村上春樹の訳ではなかったけど)インチキくさい大人の世界や社会に対して、嫌悪感を持っていました。といっても、この本自体に嫌悪感を持っている人も多かったので、高校のときは、一度読んでそのまま本棚行きとなっていました。

そして、どういう訳か就職活動を始めたとき、本棚に並んでいたこの本を何となく読み返して、ライ麦畑のキャッチャーってどんな仕事なんだろうと考えたのです。そのときには、自分自身がインチキくさい大人にならないように、いつも情熱を持って楽しんで仕事ができる場所を探そうと思いました。

幸運にも、とてもいい会社で働くことができ、エキサイティングなビジネス人生を送らせてもらいました。そして、独立をするというときになって、またこの『ライ麦畑のキャッチャー』のことを思い出したのです。今、私がやっている出来るだけ多くの若者たちに海外で学ぶことを経験してもらう仕事は、まさにインチキくさい社会に落ちてしまわないようにするキャッチャーだと思っています。旅行とかではなく、本当に世界を経験した若者たちは、例えどんなおかしな社会に入ったとしても、自分の力でそれを良くしていけるものだと信じています。

私は、きっとこれからも、インチキな大人や権威や社会と戦い続けながら、若者たちが簡単に崖から落ちないように見張っているんだと思います。