機内誌って不思議な読み物

飛行機に乗ると、よほどのLCCでもない限り、各シートに機内誌が用意されています。考えてみると、世の中で一番安定して読まれている雑誌の一つかもしれません。

内容は、オーストラリアや世界各地の都市のイベント情報や、ホテルやレストランなどの旅の情報、それらに関わる人たちのインタビューなど、とても面白いので、なんとなく読んでしまいます。


しかし、いつも不思議に思うのは、この雑誌の広告主たち。たぶん、何十年もこれらの雑誌は、高級時計や宝石やファッションの高級ブランドの広告で成り立っている気がします。セレブなスターたちがその商品を身につけている写真を掲載するだけで、売れてしまうほど世の中甘くないとは思うのですが、もしかしたら、こんな広告でも憧れて高級品を買ってしまう人々はまだ世の中にいっぱいいるのかもしれません。

そんなシュールな広告だけかと思ったら、今月号にはなんとオーストラリアや世界の有名大学たちのビジネススクールの広告も並んでいました。出張で飛行機に乗ることにウキウキしている若いビジネスピープルに対して、狭いエコノミークラスなんかに乗ってないで、ビジネスクラスに乗りたかったらビジネススクールで勉強するのが一番みたいなメッセージなのでしょう

でも、きっとその有名大学のビジネススクールのマーケティングの教授が見たら、「絶対効果ないよなあ」と嘆いちゃうのではないでしょうか。

世の中には、このような破綻しているマーケティング戦略や広告をいくらでも探すことができます。きっと、会社の中に専門のマーケティング部門をつくった瞬間から破綻は始まるのだと思います。だいたい、お金を使うことを目的とした部門や人々が会社にいるなんて、考えると不思議な話です。

僕の会社のように、広告費もマーケティング費用も一切使わない会社になると、社員全員がマーケティングのことを考えてくれるようになると思うのですが、多くの会社にとってそれは勇気のいることなのでしょう。ですから、ネットを見ていて、留学会社のバナーや広告を見つけると(僕がこういう仕事をしているので、よく出てきます。)礼儀だと思って、クリックしてあげています。

眺めのいい街

僕の仕事のひとつは、数ヶ月ごとにオーストラリア国内にある各支店を訪問してスタッフと話したり、その都市に留学している若者たちと会ったりセミナーを開催することですが、先週はパース支店に行ってきました。

僕が初めてパースを訪れたのは、もう22年前のことです。当時勤めていたベネッセコーポレーションで映像制作の仕事をしていて、その関係でこのオーストラリアの西海岸の街に降り立ちました。二人の娘たちが小学校からこの街に留学したこともあり、それから毎年数回は訪ねています。


世界で一番孤立した都市と言われるくらい、近くの大都市から飛行機で数時間飛ばなくてはいけないこの街は、東海岸のシドニーやメルボルン、ブリスベンと比較して、少しのんびりしていて、ゆっくりとした時間が好きな人たちが好む街です。娘たちも、買い物はメルボルンや東京が刺激的で面白いけど、生活をするにはパースがいいらしく、動く気は無さそうです。


彼女たちのように、住みだしたら多くの人たちが気に入るこの街の魅力だと僕が思うことは、その眺めの良さだったり、広々とした空間からくる気持ちの良さです。観光客が必ず訪れるKings Parkに行くと、街路樹のユーカリの木の香りと、街の横を流れるSwan Riverの流れが穏やかで、背伸びしたり、深呼吸したくなってしまうのです。そして、眺めの良さって、考え事をするのに、とても大切なことで、30代の僕はよくこの街の公園やビーチで将来について思いを巡らしていました。

特に何か名所があるわけではないこの西海岸の街に、きっとこれからも、そしていつか引退してからも、この眺めを見ながら、深呼吸をしにやってくるのだと思います。

大学編入か大学院か?

今年になって、日本の大学に通っている学生の方から、オーストラリアの大学に編入したいという問い合わせが増えています。今までは、大学1年生で半年通ってみたけど、やはり夢だった海外の大学で学びたいという問い合わせはあったのですが、最近は大学2年生、3年生の学生たちからも編入の問い合わせがあります。


すでに支払ってしまった授業料や、すでに取得した単位をオーストラリアの大学で認めてくれるかどうかなど、リスクは承知で進路変更を考えているのはとても分かるのですが、2年生、3年生であれば、まずは日本の大学をいい成績で卒業して、オーストラリアの大学院に行くという可能性も考えるべきだと思います。

僕が編入よりも大学院進学をお勧めする理由は、将来、もし日本以外の国(オーストラリアなど)で就職を考えた時に、大学院を修了したことは、大学卒よりも有利になるからです。日本では、大学卒も大学院卒もあまり就職の時に違いはないのかもしれませんが、オーストラリアなどでは、Master degreeを持っている人の方がBachelor degreeよりも採用される確率が高くなります。

今の段階では、世界で就活しないで日本の企業に入るつもりでも、卒業するタイミングでは世界の舞台で活躍したいと思っているかもしれません。そんなときのためにも、可能性は広げていく方がいいと思うのです。

また、大学3年生であっても、日本の大学の卒業までは2年近くあるわけですから、英語の準備をしたり、アルバイトをして資金を準備する時間も作ることができます。一刻も早く、進路を変更したいという気持ちはとてもよくわかりますが、人生は本当に長いので、焦らずに良い選択をして欲しいと思います。

子どもの留学のタイミング

親の立場からすると、子どもをどのタイミングで留学させるかということは悩む問題の一つかと思います。世のなかには、親子留学だとか小学校留学、中学高校のボーディングスクール留学など、魅力的な宣伝とともに、様々な留学プログラムが販売されています。そして、その金額はサポート費用も含めてとても高額なものがほとんどです。少しでも早く、英語の世界に慣れさせておきたいという親の不安をくすぐるプログラムで、早期教育特集の雑誌を買ってしまう高年収の親たちをターゲットにしています。

お金に余裕のあるご家庭は、どうぞお好きなようにしていただければと思います。


では、普通の家庭はどのような戦略を立てたらいいのか。僕は、大学や大学院など、ある程度大人になってからの留学を実現させるべきだと思います。子どものうちに何かに触れさせるのも、もちろん悪いことではないとは思いますが、大人になる過程において、楽チンな家族や友人や地元の世界ではなく、社会や外の世界で自分のポジションを確立していくことが、それ以降の人生においてとても大切なスキルになると思うからです。

オーストラリアの大学では少なくとも日本の大学よりも勉強しなくては卒業できません。たぶん、10倍以上は本を読まないといけないと思います。それも英語で!そして100倍くらいクラスで発言しないと、いい成績はとれないと思います。そんな緊張感あふれる世界で大学生活を過ごすことで、世界のどこででも働けるスキルとマインドセットが養われるのだと思います。

オーストラリアの大学は3年で卒業でき、学費もアメリカの大学の半分程度とはいえ、3年間で700万円から800万円の授業料がかかります。18歳にそのくらいの教育資金が必要だということを考えながら、計画や準備をしていただければと思います。

何を解決したいか?

若者たちに将来どんな仕事をしたいか?と聞くのは、あまりいい質問ではないそうです。なぜなら彼らが活躍する、10年後20年後にその仕事がそのまま残っている可能性は極めて低いからです。確かに、これからさらにテクノロジーや人工知能の発展がスピードアップして、仕事というものは、どんどん変化をしていくことでしょう。


では、若者たちには、どんな質問をしたらいいのか、僕なりに考えてみました。

多くの仕事は、何かを解決するために存在しています。それはある特定のお客様の問題を解決するものかもしれないし、社会が問題としていることを解決するものかもしれませんが、とにかく、何かのサービスや解決策の対価として、お客様がお金を払うということは、これからも変わらないはずです。

ですから、どんなレベルでもいいので、自分が解決したい問題を、数多く考えてみるのは、自分と仕事の関係を考えるいいステップだと思います。地球の環境問題でも、自分の住んでる街に美味しいレストランがないということでも構いません。数多くあげてみると、自分がどんな世界に興味があるのかとか、自分が解決できそうな世界のイメージが見えてくるはずです。そして、どんな問題も、人によって解決方法に個性が出てきます。さまざな解決方法が切磋琢磨することで、社会が良くなっていき、次の世代に繋がれていく、そんな仕事を選んでいけたら最高ですよね。

社会貢献の考え方

会社の業績が安定するようになって、オーストラリア国家に税金をちゃんと収めるだけではなく、自分たちで何かコントロールできる社会貢献について考えるようになりました。今年度はまずは1万ドル!を使ってみようと思い、様々な選択肢を検討してみました。


例えば、誰かの留学費用を全額、あるいは一部を負担するような奨学金的なもの。経済格差が学習格差になってしまっている現在、ボランティアで学習支援をしている学生たちへの寄付。あるいは子ども食堂などへの寄付。いくつもの選択肢の中で、今年度実行したのは、できるだけ多くの方々に環境について考えていただくために、Keepcupという使い捨て紙コップを止めるためのマイカップの提供です。全部で500個ほど製作して、留学生たちに配っています。色は2種類、そして純粋に環境問題に貢献したいので、会社のロゴなどは一切入れず、その分の予算はより多くのカップを製作するために充てました。だいたい、企業のロゴが入ったノベルティーグッズを喜んで使う人はいないのに、いまだにどんなものにもロゴを入れようとするのは、賢い選択ではない気がします。

これから、多くの留学生たちが、ちょっと面倒でもこのKeepcupを持ち歩いて、友人とカフェに行った時にでも、環境や自然について語る時間が増えることを楽しみにして、このプロジェクトはできるだけ長く続けていきたいと考えています。

年齢の重ね方

先日、56歳の誕生日を迎えました。ここまで生きてきてこれたことに、さらに今のところ健康で、ほぼ毎日テニスができる元気があることに、支えてくれている多くの方々に感謝することはあっても、誕生日で嬉しい!みたいな感情は全くありません。それよりも誕生日になると死について考えるようになったのは、相応の年齢になってきたからだと思います。なにしろ、スティーブ・ジョブズが亡くなった年齢になってしまったのですから!


これから、きっと何年かごとに僕の中の何かが死んでいくことになるでしょう。運動ができなくなる死、記憶が作れなくなる死、気の利いた会話ができなくなる死、など少しずつ何かが僕から消えていき、そしてその順番は僕には決められないのでしょう。だからこそ、毎日何か一つやりたいことを加えていきたいと思います。朝起きて、今日はこれをやろう!と思ったことを、躊躇しないでやろうと思います。海を散歩するのでも、山に登るのでも、誰かに電話をするのでも、昼からビールを飲むことも!(家から仕事をしてるので、たぶんバレない)そして、その時に考えたことをちゃんとどこかに残しておこう。

そんな風に、ささやかでも何かを生み出しながら、歳を重ねていきたいと思います。

語学留学に意味はあるのか?

英語は、世界の他の言語に比較してもそんなに難しくありません。文法などは簡単な数学みたいな感じで、ルールさえ覚えれば、読んだり書いたりすることは日本にいながらでも十分に習得することができます。海外に行ったこともないのに、TOEIC990点みたいな人が数多くいらっしゃるのも、そのシンプルな構造を理解してしまえばテストの点は伸ばすことができるからだと思います。


しかし、例えばTOEIC800点でも、英語をうまく話せない人も数多くいらっしゃいます。海外に留学に行き、語学学校に通って欲しいのは、実はこういう人たちです。つまり、基礎は出来ているけど、英語のコミュニケーション力が不足してる人たちです。そんな人が1年間語学学校に通うと、ほぼペラペラになります。ビジネスの世界でも通用する英語によるコミュニケーションが可能になります。

基礎が出来ていない人は、海外留学よりも先に日本でお金をかけずに、中学高校の英語を復習すべきです。その復習が終わってから留学することが、留学における投資対効果を高める一番の方法です。

語学留学は英語を勉強しに行くのではなく、コミュニケーション力を磨きに行くべきです。日本人が苦手な、すべてを言葉で語らなくてはいけないローコンテクストなコミュニケーションスタイルに慣れること、自分の意見を明確に表現することの2つの課題を意識して語学学校に行くと、一生ものの英語によるコミュニケーション力を身につけられ、それが語学学校に行く意味なんだと思います。

カフェ文化の違い

3週間の東京への出張を終えて、サンシャインコーストに帰ってきました。

サンシャインコーストに帰ってきて、まず最初に出かけたところは、通い慣れたカフェでした。カフェの店員さんに、久しぶりねと声をかけられ、東京に3週間行っていたことや、家族の話をした後、ここのコーヒーが飲みたかったんだよね、みたいな話をしました。そう、カフェでは店員さんと話すのがオーストラリアです。特に田舎の小さな街では。


東京では、例えばスターバックスなどのカフェに行くと、多くの人たちが本を読んだり勉強をしたりして、個人の時間を楽しんでいます。コーヒーを楽しむというよりは、一人の時間を楽しむためにカフェを利用している感じです。ですから、テーブルや椅子のレイアウトも、個人の空間を確保するために作られています。あんなオープンな空間に、多くの人が自分のことだけ考えて静かに何かに集中している姿は、コーヒーを楽しみながら誰かと話しに行くオーストラリアのカフェに慣れてしまった僕にとっては、逆に居心地が悪いのです。

きっと、この日本的なカフェの使われ方、楽しみ方は、スターバックスやカフェのオーナー達が意図したものではなく、日本人のニーズによるものです。つまり、あれが日本の(たぶん都会の)カフェ文化なのでしょう。

オーストラリアはカフェ文化が独特とか言われ、コーヒーの消費量が多いとかフラットホワイト、ロングブラックなどオーダーの仕方が変わってるとかの話をネットでも見かけますが、何よりも日本と違うのは、カフェはコミュニケーションの場なのだということだと思います。ぜひ、オーストラリアに留学したら、そんなカフェ文化を楽しみに、友達と出かけてみてください。

私立の語学学校に通うメリット

オーストラリアの語学学校には大きく分けて、私立の語学学校と大学やTAFE(公立の専門学校)の附属語学学校があります。附属の語学学校は本来はその大学なり専門学校に将来通う学生が学びに来る場所ですが、最近ではその語学学校だけに通って日本に帰る大学生も増えています。


私立の学校も附属の語学学校もそれぞれ通うメリットがあるのですが、うちの会社のサイトも含めて留学会社のサイトではあまり取り上げられない私立の語学学校に通うメリットの一つを紹介します。

それは、それまでの人生で会ったことのない人々に会えるということです。それも違う国籍の人ということだけではなく、自分と違う世代の人々と話す機会がすごく増えます。

自分の学生時代や20代を振り返ったり、多くの若者たちと話をして気づくことは、日本の普通の若者が大人と話す機会は、親か学校の先生と話すかバイト先、あるいは勤務先の上司くらいしかないということです。オーストラリアの語学学校には、様々な国から様々な世代が勉強に来ています。すでに自分の国でいくつものキャリアを積んできた人に会うことも普通です。母国では、会計士だとか会社を経営してるとか、カフェを持ってるとか、じゃあ、なんでそんな人が、そのキャリアを中断してオーストラリアで英語を勉強してるの?と聞きたくなる人も多くいます。

日本の若者で、自分が何がしたいのかよくわからないので海外にやってきたという人にも会いますが、そんな人こそ、世界各国から来る大人たちに、積極的に話しかけて、人生について聞いてみるべきです。聞いたこともない街で育ち、なかなかイメージできない生活をしてきた人たちに、勉強する理由や将来の夢を聞いてみることは、同じような考え方しか許されない小さな日本社会に違和感を感じてきた人には、いい刺激になると思いますよ。