過去はもったいなく無い

「もったいない」は数年前に日本の良い文化として世界にも紹介された言葉ですし、僕たちの生活にも浸透している価値観の一つだと思います。

しかし、その「もったいない」という価値観のおかげで、過去に投資したけれども回収の見込みが薄いお金、経営学で学ぶsunk cost(埋没費用) に対してすごく敏感な組織文化を作ってしまっています。過去を捨てきれない、過去に失敗があることが許されないような雰囲気、そのおかげで意思決定が遅くなる企業文化を作る理由の一つが「もったいない」なのだと思います。

これは個人においても、似たようなことが起きています。最初に乗ったレールからなかなか降りれずに人生のチャンスを逸してしまうのは、過去の成功や、学歴や、我慢して出世の階段を登ってきたことが捨てられないからです。せっかく今まで頑張ってきたのに、違う道を歩みだすのはもったいないと人に説得されたり、自分で納得しようとするのです。

しかし皆さんが思っているよりsunk costは大きくなく、今から人生をやり直しても(たとえ僕と同じ54歳だって!)十分に回収できるでしょう。そんなことより、一回きりの人生の残された時間の中で、過去がもったいないからこれをやっている、という時間はとてももったいないと思います。

悩まないで準備をしよう

留学前の若者たちからの問い合わせで興味深いのは「やっていけるか心配です。」というもの。確かに、海外で暮らしたことがない人や、高校生の時は英語が得意ではなかった人が心配になるのは自然なことなのかもしれません。あるいは、留学エージェントに相談するのだから、少しくらい悩んでいた方が優しくアドバイスしてくれるかもという戦略かも知れません。いずれにしろ、問い合わせの段階ですごく心配している人が多いのは、僕たちの会社のメッセージを考える上でとても気をつけなくてはいけないことだと思っています。

僕は、人生の中で、それなりに大きなチャレンジというものをしてきましたが、心配したということはほとんどありません。それは自信があるからとかではなく、「今、悩んでもしようがないことは悩まない」という理由なだけです。心配してもしようがないことは心配しない。それだけでストレスは随分と無くなります。未来が不安なら心配しないで、できるだけ準備をすればいいだけです。

見えない未来に対して、準備をすることと心配することは似て非なるものです。留学の準備は、お金を貯めること、英語の基礎を復習しておくこと、達成可能な目標を持つこと、目標に近づかないことはやらないと心に誓うこと、このくらいで十分です。留学に飛び出す半年も前に「現地で安い携帯電話を借りられるかどうか心配」する必要はないし、そんな情報を追っかける必要もないと思います。その時間は英語の復習をして、少しでも英語のレベルを上げて現地に行くと出会える人々や経験が違ってくると思いますよ。

 

帰国してから考えてみること

東京に帰ってくると、できるだけ多くのお客様だった方たちとお会いするようにしています。

留学が終わって、就職が決まった方、働き出した方、結婚が決まった方など、次のステージに進んだ方たちとお話をすることは、僕たちの仕事がお客様たちの人生にとって意味があったのかを確認するための大切な時間です。仕事の価値を確認する方法があるというのは、珍しいことかもしれないし、気にしなくてもいいことなのかもしれませんが、僕にとって、その時間は多くの気づきを与えてくれます。

会社を経営していると、売り上げや利益や問い合わせの数や成約率など、業績に影響を与える指標についてチェックする習慣はつきますが、お客様一人ひとりにとっての留学の価値について考える時間はなかなか取れません。ですから、日本に帰ってきたときには、少しでも若者たちに会うことで、僕たちの方向性が間違っていないかをチェックしなくてはいけないのだと思います。大人の人々にはなかなか会えませんが、思い出話を語り合うのは、僕が隠居してからも十分に時間があると思うので、長生きしましょう。

留学が自分にとってどのような意味があったのか、人に語れるエピソードはどのようなものか、ぜひ、僕を練習台にして、語ってほしいと思います。それを考えることで、留学が終わってからも、留学に新しい価値が加わると思います。

いい友だちに出会う方法

人のモチベーションやムードは、周りの人たちから大きな影響を受けているそうです。確かに、ちょっとしたミスにも厳しい上司や同僚ばかりいる組織では、人々はミスをしないことに目標を置いて、新しいことにチャレンジすることはないでしょうし、いつも愚痴ばかり言っている集団と付き合っていると、その人も愚痴っぽい人間になっていきます。私たちが思っている以上に、周りの人の影響って大きいものだと思います。

(C) INFORUM EDUCATION AUSTRALIA

留学においても、その学校にどんなタイプの留学生が多いのかは、その人の留学生活に大きな影響を与えます。どんな友達たちと出会うのかは重要ですよね。

学校にどのようなタイプの留学生たちが集まるのかは、学校のマーケティングの戦略を見ればなんとなく分かります。

例えば、価格が安いことを売っている学校は、安いことを求める留学生が増え、真面目な学生の比率は下がる傾向にあります。アクティビティが盛んなことを訴求する学校には、放課後を楽しみたい留学生たちが集まります。母国語禁止ルールが厳しい学校には、真面目で少しでも英語を伸ばしたい留学生たちが集まります。つまり、自分の目的に合った学校を選ぶと、似たような目的を持った留学生たちに会うことができるということです。

よく、留学生たちの国籍割合を気にする方がいらっしゃいますが、国籍割合よりも、他の留学生たちの質というか留学に対する考え方を気にした方が、一生の友人に出会えるチャンスは高まると思います。

「空気読めない」ことが英語上達の秘訣

あなたの書く(話す)英語は、曖昧で意味がよくわからない、と多くの日本人留学生たちは語学学校の教師に指摘された経験があるかと思います。この問題は、英語の能力の問題ではなく、日本社会で慣れ親しんだハイコンテクストな僕たちのコミュニケーションスタイルの問題の方が大きいので、落ち込む必要はありません。ハイコンテクストとは、「空気読んでよ」みたいなことに代表される、社会や組織の文化を共有することで可能な、多くを語らなくても通じるコミュニケーションのことです。

では、言葉で全てを説明しなければならない、ローコンテクストな英語の世界でのアプトプット力をつけるためにはどうしたらいいのか?

すでにオーストラリアに留学に来ていて、学校に通っているなら、何かテーマを決めて作文を書き、それを先生やネイティブの友達にどんどん添削してもらうことをお勧めします。語学学校の先生はそのためにいると思ってもいいくらいです。時間がないなら、意味がわかりにくいところにアンダーラインを引いて、「?」と書いてもらうだけでもいいので、皆さんが書いている文章のどこが分かりづらいか指摘してもらいましょう。指摘されれば、どう修正すればいいかは、だいたい分かるはずです。それを繰り返していくと、必ず英語らしい文章が書けるようになります。

では、留学前で日本で英語の勉強をしている人はどうしたらいいか?ハイコンテクストな日本人のコミュニケーションスタイルが問題なら、ローコンテクストな日本語を書く練習から始めてください。つまり、分かりやすい日本語を書くという練習です。できれば、英語に訳すことをイメージしながら日本語を書いてみましょう。最初は慣れないかもしれませんが、書き続けていくとコツも掴めてくるし、英語のアウトプット力にも必ず効果が現れてきます。

僕たちは英語ができないのではなく、コミュニケーションのスタイルが違うんだと考えると、英語はそんなに怖いものではなくなりますよ。

誰かを助けてみよう

ほぼすべてのビジネスは、誰かに役に立つこと、誰かを助けることによって成立しています。
ということは、ビジネスセンスを磨くということは、人を助けるセンスを磨くと言えるかもしれません。

「誰かを助けるなんて、私には、、」と思ってる人でも、友達の恋愛の相談にのってあげたり、旅行の計画を考えたり、様々なところで誰かを助け、役に立っています。その助けている場面を分析していくことで、自分の得意な分野を活かすことを意識できるようになります。例えば、ホームパーティーで料理が得意なら食事担当、情報収集が得意なら買い物担当、デザインが得意ならデコレーションや招待状作成担当、など自然と役割分担もされているのですが、ほとんどの人は、このような自分の得意分野というものを意識していません。今日からそれを意識してみることで、自分のキャリアの方向性が少し見えてくるかもしれません。

オーストラリアに留学に来ると、もちろん自分にも困ったことは必ず起こりますが、世界中から来た友達にも困っている人がたくさんいます。そんな時に「なんか困ってることない?大丈夫?」と声をかけることは、新たな可能性を発見するための効果的なステップです。日本人では困らないようなことも、他の国の若者は困っているかもしれないし、日本人ならではの悩みも発見できると思います。

もちろん、すべての他人の悩みを解決してあげることはできませんが、「ごめん、それは無理。」と Noと言う練習もできるし、周りを巻き込んで解決することで交渉力もつくなどの副次的な効果もあるので、ちょっとだけ首を突っ込んでみて、自分に何ができるか試してみてください。そんなことを続けていくうちに、いい友人もできるし、新たな自分自身を発見できると思います。



都市に留学するということ

50歳を過ぎて、都市で暮らすということには、あまり魅力を感じなくなってしまいました。僕の場合、東京生まれ東京育ちということもあり、約50年、東京という刺激的な都市を十分楽しんだということもあるかもしれません。

しかし、自分の経験を振り返って考えてみると、20代に海外の都市に行った時の印象は今でも鮮明に覚えています。建築物、サイン、小売店、交通機関、歩いている人々、走っている車、すべてが刺激的で、新しく感じられ、そこを歩いている自分も少し国際人らしくなったのではと勘違いもしていました。

都市に留学する一番の目的は観察することです。見渡せば、観察すべきものはいくらでもあります。将来、ファッションに興味があれば、セレクトショップや歩いている人々を、食に興味があれば、レストランやカフェを徹底的に観察すべきです。うまくいっている店とうまくいっていない店の違いとか、日本に売れそうなもの、あるいは日本から売れそうなものを考えてみることは、ビジネスを立ち上げたい人にはとても良いトレーニングになると思います。

最近、物価が高いので都市には行きたくないという若者も見受けられますが、20代なんて基本的にみんな貧乏なので、自分の領域でつましく生きていくことを考えるより、その後の成功のために充実した経験、観察ができるかを考えて、留学先を選んだほうがいいと思います。消費しに行くのではなく、観察し、自分の言葉で語れる知識を増やすことが留学だということを忘れずに。

 

大学のキャンパスを歩いてみる

都市の街中にある語学学校で勉強している留学生やワーホリの人たちの中には、生活にも慣れてきて、海外で暮らせているという達成感も得て、勉強に飽きてきたり、なんとなく勉強にやる気が出ないという人も見受けられます。海外の都市でしっかりと暮らしているという目標達成は出来たのに、それに比べて伸びていかない英語力にフラストレーションを溜めてしまうようです。

そんな人たちにオススメなのが、大学のキャンパスを歩いてみるということ。できれば、図書館にもぐり込んでみたり、カフェなどでコーヒーを飲みながら、勉強してみてください。

大学には当然ながら、学生しかいないし、彼らは勉強するためにそこに来ています。ですから、視界に入る多くの人が「勉強」を主目的に生きているわけです。そのような環境に自分を置くことで、自然と勉強する雰囲気になり、都市の雑音も無く集中でき、やる気も効率も上がると思います。

僕も時々、打ち合わせ以外でもノート片手に大学に出かけて、お茶を飲みながら経営のことを考えると、不思議に新しいアイデアが浮かんできます。素敵なキャンパスには、そんな力がある気がします。

 

 

真実を探すために

留学エージェントにとって、一番起きてはいけないクレームの一つは「日本で聞いていたことと違った」というものです。

私たちのオフィスにも、他の留学会社で学校を申し込んでオーストラリアにやってきたけど、聞いていた状況と違ったということで、学校変更の相談にいらっしゃる人が時々います。先日はある学校から何人も同じように学校を変えたいという若者たちがやってきて、相談をしていました。その学校は私たちとは契約が無く、実態はよくわかりませんが、マーケティングだけ上手い学校というのも中にはあるのだと、ある意味感心してしまいます。

リアルな情報を伝えるのが、学校を紹介するエージェントの仕事でしょ!と多くの人が考えるし、私もその通りだと思うのですが、なかなかこれが簡単ではありません。なぜなら、留学エージェントが持つ情報は、ほとんどが学校のマーケティング部門からの情報だからです。その情報は事実であっても、マーケティング用の情報です。全てを網羅しているわけではありません。

それなら、定期的に学校に見学に行けばいいということになります。訪問すると学校の雰囲気は分かりますが、それでも十分ではありません。分かるのは本当に雰囲気だけで、真面目な留学生が多そうだとか、レベルの高いクラスには日本人が少なそうだ、などの見て分かる範囲の事実に気づくだけです。

現地にいる私たちは、いつも学校の情報を留学生の方と直接会い、彼らの言葉からリアルな情報を得ています。この学校のこの先生はいいけど、この先生はイマイチとか、ちょうどある大学からの研修旅行のやる気のない学生が来ていて避けるのが大変、などの学校からは絶対に聞けない情報を聞いて、社内で共有したり、学校のスタッフにもフィードバックをしたりしています。

ですから、うちの会社では留学生とお茶を飲むことは奨励しているし、会社で費用も負担しています。留学生の皆さん、お茶が飲みたくなったら僕に連絡してくれると、無料でお茶、たまにビールが飲めると思いますよ。

 

変わりたい vs 変わりたくない

多くの人たちの留学を考えるきっかけは「自分を変えてみたい」というものです。「もっと英語が話せる自分になりたい」「狭い世界ではなく、世界中に友だちを作りたい」「将来につながるかもしれない勉強や資格を海外で学びたい」などなど、日本での現状からの脱却のために世界に飛び出すことを決意します。

ところが、不思議なもので、留学に来て失敗というか諦めていく人たちは多くの場合「変わりたくない」症候群によるものです。「日本ではこんなことありえない」とか「私にこの学校は合ってない」とか、ちょっとマインドセットを変えるだけで解決するような話も「変わりたくない」人たちにはとても難しい問題のようです。

しかし、よーく考えてみると、この問題は自分自身にとっても、組織にとっても、社会にとっても、いつも問われていることだと気づきます。僕自身が、実は「変わりたくない」側に簡単に行ってしまうタイプであることは、よく分かっています。だからこそ、責任から逃げられない会社の経営者のポジションや、セミプロみたいなレベルでテニスをしていた選手たちと戦うトーナメントに身を置かなくてはいけないのです。そこに身を置くことで、「変わりたい」と言う気持ちが「変わりたくない」に勝つようになり、「変わるしかない」になります。

この境地に達した人は、ほとんどの人が満足いく成果と満足いく留学を経験します。本当に、マインドセットがすごく大きな影響を与え、だからこそ、現地で相談に乗っているスタッフのトレーニングは欠かせないのだと思っています。