善意を信じる?信じない?

経営学の授業や、ビジネススクールなどの「リーダーシップ」や「組織論」の授業で教わることのひとつに、メンバーにちゃんと働いてもらうためには罰則(パニッシュメント)を強化しても全く効果はない。なぜなら、人々は罰を受けないように行動するからだ。みたいなことがあります。遅刻をしたら罰金!と言われたら、時刻通りに会社には来るけど、ただいるだけで、生産性やモチベーションにはなんの効果もない、というようなことです。


つまり、罰則は人にあることをさせないためにだけ、効果があるということです。そして、オーストラリアは、新型コロナウイルス の感染を広げないために、まるで理不尽な校則みたいに、罰則を強化しています。

自己隔離中に外出して友達と会っていれば最高で100万円くらいの罰金、家族以外の友人たちと3人以上で集まって近距離で話していたら10万円くらいの罰金、ビーチで運動ではなく寝ていたら罰金など、マジですか?というくらいの罰金を課せられます。すでにオーストラリア全土で100万ドル以上の罰金が徴収されているようです。

どんな真面目な人でも、この自粛モードが長く続くと、「なぜ、こんなことを長く続けていなくてはいけないのだろう?この近所でコロナウイルス なんているわけないし、ズルをしている人もいるはずなのに。。」とネガティブな心が出てきます。日本でもそんなクレームがSNSでは流れていますよね。そんな時に、こんなバカな奴らがこんなに罰金をくらった、みたいなニュースはある種の爽快感とともに、多くの人にもう少し頑張ってみようと思わせる効果もあるのかもしれません。

オーストラリア政府が、そんな人間の愚かな心まで見通して、この罰金システムを作ったのであれば、それはすごいことかもしれません。日本政府は日本人の善意を信頼して、罰則のない自粛モードを展開しています。果たして、どちらの手法が効果があったのか、社会学の研究テーマとしてもすごく面白そうですね。

誰のための支援なのか

日本も緊急事態宣言が発令されて、次は経済支援が注目されますが、あまりオーストラリアの経済支援策は取り上げられていないので、ひとつ紹介をしておきます。日本に比べるとずーっと分かりやすくシンプルです。(これ以外にも企業救済の様々なプログラムが発表されています)


まずは、このような支援を考えるときに、「誰に」「どのくらい」「どのように」支援をするのかを決めなくてはいけません。

オーストラリアの場合、「誰に?」は今回の新型コロナウイルスで被害を受け、売上が対前年から30%ダウンした企業に勤める社員が対象です。彼らが無職にならないように支援をするということで、「Jobkeeper」と呼ばれています。公務員やトイレットペーパー屋さんは当然ながら対象にはならず、カフェなどの飲食店や観光業に携わったり、もちろん僕の会社の留学ビジネスで働く人々も対象になります。

次に「どのくらい?」の支援があるのかというと、国民、永住権保持者の社員1人あたり2週間で1,500ドル、1ヶ月でいうと約3,000ドルの給与分を6ヶ月にわたって国が支払ってくれます。融資などではなく、給付してくれるのです。この金額の設定基準は最低時給程度というものです。僕の会社では10人くらいが永住権保持者で対象となるので、毎月3万ドル、6ヶ月で18万ドルを国から貰えるのです!これは助かります。おかげで僕の会社では誰かを解雇したり休業したりすることはありません。

最後に「どのように?」というお金の渡し方ですが、これは企業に国から毎月支払われ、企業は対象者にちゃんと給与を支払った証明を国に対して行います。お金がちゃんと雇用の維持に使われたかをチェックする仕組みができるはずです。企業にお金が渡っても、それを資金繰りに使われたりしたら意味がありませんからね。

いかがでしょう?分かりやすいですよね。特に、「企業」を助けるのではなく、「企業で働く人」を助けるための仕組みなのだということが誰にでも分かるのがいいと思います。日本で、果たしてこんな支援策ができてくるのか?注目したいと思います。

海外で会社を経営するというのは、なかなか苦労も絶えないわけですが、今回の支援策はとてもありがたく、オーストラリアで会社をやってて良かったと思います。まだまだ苦労は続きますが、こういうときに経営者の手腕が問われてくると思うので、頑張っていきたいと思います。

どんなコンセンサスがなされるのか

1月には中国だけの話でしょうとお気楽に考えていた新型コロナウイルスが3ヶ月で世界を暗黒におとしいれています。最初の頃は、どの国も、オリンピックのメダル争いのように、各国ごとの感染者数を表にして、うちの国は少なくてすごい!みたいなことをやっていましたが、今となってはそんなことをやっていた国がまずいことになっています。


オーストラリアはとても厳しいルールを設定して感染を防いでいるので、1ヶ月後くらいには良い結果が出ていることが予想できます。他の国たちの状況を見て、いち早く対策を打ったのは多くの国民にも支持をされているようです。

しかし、再来年に同じことが起きて、世界各国が今回と同じようなレベルの対応を取ったら、世界経済は本当に崩壊してしまうと思います。ですから、今回の教訓から、どのようなコンセンサスを世界各国で協力して作るかが大きな鍵で、私たちはそれが出来たかを確認する必要があると思います。

例えば、素人の僕が考えても、

世界のどこか(南の島だろうが日本だろうが)でこのようなウイルスによる感染が発見されたら、その瞬間から1ヶ月は世界中で人々の移動を禁止する。当然ながら飛行機も飛ばさない。世界各国が同時にやることに意義がある。

1ヶ月もすれば、どこが安心な国か、感染者がいる国かが把握できる。

安心な国同士での人々の移動は再開、感染者がいる国では、感染者が回復するまで、あるいは全ての感染者を隔離するなどのコントロールできるまで禁止。

こんなステップを世界各国が共有するだけでも、ずいぶんと危機の時間の短縮ができるはずです。今回のように半年以上、もしかしたら1年も人々が動けなくなったり、ビジネスが止まったりすることを回避できるのです。

このグローバルな時代、地球の片隅で起こったことが、僕たちの日々の生活に大きな影響を与えることを改めて認識し、くだらないナショナリズムは捨てて、世界的に協力をしていくことを学ばなければ、今回いきなりの悲劇に見舞われた人たちに申し訳ないと思います。

自然とのソーシャル・ディスタンス

オーストラリアでは、現在、同居家族以外の人との物理的な距離を1.5メートル取ることを義務付けられていて、それをSocial Distance と呼んでいます。友だちと話すときも、2メートルくらい離れて、なんかよそよそしく話をしています。


今回の新コロナウイルス問題では、多くの方々が生き残ることだけを(生物学的にも社会学的にも)考えていらっしゃると思いますが、僕たちはここから様々なことを学んで次に生かしていきたいところです。

そもそも今回のコロナウイルス は新しくできたものではなく、すでに動物の中で生きていたウイルスに、人間が新しく出逢ってしまったことが「新」なので、出逢うべきウイルスくんだったのかが最初の学びだと思います。

そう、つまりは出逢うべきウイルスではなかったわけです。世界の誰かが、コウモリか何かに近づきすぎたのが原因なのです。それは純粋に好奇心だったのか、偶然だったのか、アクシデントだったのかはわかりませんが、食べちゃったり、触っちゃったり、殺しちゃったりしたわけです。

ここでもう一度人間と自然との距離を考えてみるべきなんだと思います。僕たちは自然に生かされています。多くの人たちが自然をリスペクトし、全ての人が自然の恩恵で生きています。しかし、それは全ての自然に踏み込んでもいいということではなさそうです。

自然にはまだまだ僕たちの知らないパンドラの箱が残されているでしょう。それらを開けてもいいのか、開けるならどう開けるのか、自然とのSocial Distance(この矛盾した言葉遊びはけっこう気に入っています。)を保ちながら、学び、知恵をつけていかなくてはいけないのです。

悪徳エージェントの被害者にならないために

新型コロナウイルスの影響で大きな損害を被っている業界は数多くありますが、留学業界もそのひとつです。オーストラリアも、今夜からしばらく(たぶん2ヶ月くらい?)外国人は入国できませんので、留学がスタートできません。弊社でも、これから入国する留学生たち一人一人に連絡をして、延期にするか中止にするかを確認しています。もちろん、例え中止にされても弊社がキャンセル料などを徴収することもなく、学校から返金されたお金は全て払い戻しをしています。


しかし、この状況が2ヶ月くらい続くと、資金が足りなくなってくる留学エージェントも出てくると思います。過去に倒産した留学エージェントが倒産前にどのような動きをしたかを参考にして、皆さんが留学エージェントの被害者にならないためのアドバイスをしたいと思います。

大きなディスカウントを提供する

留学エージェントは授業料のある割合をコミッションとして学校から受け取ります。授業料は学校が提示した価格を維持しなくてはいけないという契約をしているので、学校がキャンペーン価格などを出している以上に割引をすることは許されていません。それなのに、それ以上の割引を提示してくるのは、資金が、足りていないことを示しています。利益よりも何かの支払いに使える現金が欲しいということです。

半年以上も先の留学なのに入金を急かす。

確かに、今は日本円が高いので、授業料を払うにはとてもお得な時期です。それでも、しつこく入金を急かすような会社は要注意です。多くの場合、そのお金は学校に支払われず、違うことに使われます。急かされたとしても、自分で考えて対応してください。

もし、すでに留学エージェントにお金を支払ってしまっていて、心配であれば、留学する学校に直接連絡して、自分の授業料が支払われているかを確認してみてください。もし、支払われていなければ、すぐ留学エージェントに連絡をしてすぐに払ってもらいましょう。

普段は普通に経営していても、危機になると道を間違える会社や経営者はどんな業界にも存在します。そんな会社の被害者にならないためにも、会社や担当者を評価する目を持ってもらえたらと思います。

ちょっとした生き方の修正

今週は、もちろん新コロナウイルスの影響で世界中が大きく混乱したことや、9年前の震災の影響がまだ深く残っていることを認識した1週間だったわけですが、そんな時だからこそ個人の生き方について考えるべきタイミングなんだと思います。

社会が混乱していると自分で考えることが面倒になっていきます。みんなと一緒に「困った困った」と言ってる方が、ずっと精神的には楽だからです。でも社会が混乱しているからこそ、どうやって自立して生きていくかを考える時間を作ってみましょう。(でもマスクの転売はせこいです。)


100年前に比べて、社会はずいぶんと生きやすくはなっていると思いますが、それでも何年かごとに、自然?は人間社会を翻弄します。そして社会が全員を守ってくれることはありません。ですから、こんな機会に、一人一人が何かしらの仮説を持って生き方をちょっと修正すべきなんだと思います。

そして、その修正内容は人それぞれなので、批判の対象などにはしてはいけないのだと思います。ちなみに僕は、今まで同様に、小さな生活をさらに小さくして、フットワーク軽く生きていきたいと思います。この6月からはまた旅も始めます。借金や固定資産に縛られることなく、背伸びをせずにインスタ映えは気にしない生活をして、でも人に会うことや若者の相談にのることには時間やお金を喜んで使っていきたいと思います。そんな生き方が、僕にとっては、社会が混乱してもなんとか生き残っていくための方法なのです。皆さんは、どうですか?

なんだかなあ

先日、ある大学附属の語学学校で打ち合わせが終わって、食堂のようなところを通り過ぎようとしたら、日本語が聞こえてきたので振り返ってみると10人くらいの大学生らしき日本人のグループがテーブルを囲んで話をしていました。仕事柄、「日本の大学生?」と声をかけ、彼らと少し話をしました。


聞いてみると、1ヶ月間の語学研修だということで、それに参加することで日本の大学の単位も得られるようでした。

何か困ったことはないか聞いてみると、「遊ぶところがよくわからない」とか「英語が上手くなっている気がしない」ということだったので、たった1ヶ月ではあるけれども、地元のスポーツや趣味のサークルなどに入って、現地の方達と知り合いになったら、英語力もいい経験も積むことができるよとアドバイスをしました。しかし、彼らには、全く響いていないようでした。そうですねと言いながら、その場からは動く感じではありませんでした。外は快晴でとても清々しい午後3時だったのに!

きっと、彼らはあと1ヶ月、放課後はみんなでつるんで「つまんねえなあ」とか言いながら時間を過ごしていくのでしょう。英語での会話力が伸びることもないでしょう。でも、留学の感想文はそれなりのことを書き、単位をもらって、履歴書には留学しましたと書き、就活に活かすのだと思います。

こういう話って、本当に時間やお金がもったいないと、僕の視点では思いますが、彼らにしてみれば、楽勝な単位獲得術で、この仕組みは、もう何年も(何十年も!)その大学では続けられていることでしょうから、彼らの問題ではなく、システムの問題なのです。

僕が言えることは、「留学には一人で行こうね。」

思わぬ副産物?

オーストラリア・サンシャインコーストに戻ってきました。ここは相変わらず空気が綺麗だし、海は青いし、人も少ないのでコロナウイルスに感染することも無いかと思います。


今回は東京に2週間滞在したのですが、東京のあの人混みの中で、すべての人が緊張感やストレスを持っている状態って、やはり居心地が悪いですね。電車の中では、にこやかな人にはほとんど出会えませんでした。

ただ、多くの企業が社員の健康管理のためにテレワークなどを導入したおかげで、ラッシュなどは少し緩和されて、ぎゅうぎゅう詰めみたいなことは無かったのが良かったです。もしかしたら、多くの企業でテレワークの実験ができていることは、この騒動の思わぬ副産物になるかもしれません。いくつかの企業では将来の生産性アップにつながるヒントを得るのでは無いでしょうか。

僕たちの会社は社員が20名なのに拠点は7つあり、かつ御家族の関係で自宅勤務の社員も3名いるので必然的にネットでゆるく繋がった組織です。それでもSlack上では議論もされるし、つきあいも長く、みんながそれぞれの個性を理解しているので、社員が同じ場所にいないことに不便を感じたことはありません。きっと社員の皆も、社長がオフィスにいなくて仕事がはかどると思っているに違いありません。

テレワークがうまくいかないという社長がいたら、それは社長の不安の裏返しか、優秀な社員を集めて来れなかった結果でしか無いと思います。東京のオフィスを縮小して、オーストラリアにサテライトオフィスを持ってプロジェクトをやれば、きっとチームのパフォーマンスも上がるし個人のモチベーションも維持できると思いますよ。

そして、これからの若者たちはそんな環境で働く人々がずっと増えるのでしょうから、練習も兼ねて、留学中もネット上でどんどん会議や打ち合わせをしていきましょうね。ご連絡お待ちしています。

コロナウイルス問題で学んだこと

2週間の東京出張もこの週末を残すのみとなり、来週の月曜日の便でオーストラリアに帰ります。この2週間は、新型コロナウイルス問題が全てだったという印象です。


オフィスのある渋谷の街は、中国からの観光客が少ないおかげで、とても空いていて歩きやすく、10年前とか20年前に戻った感じがしました。しかし、中国人観光客目当てで成立しているビジネスやお店にとっては大打撃だったのは容易に想像できます。

オーストラリアの留学ビジネスにおいても、留学生の半分を占める中国人の留学生たちが夏休みの帰省から、オーストラリアに戻って来れない状況は異常で、担当者たちはその対応に奔走しています。今年のオーストラリアの大学経営はなかなか大変だと思います。

こんな状況で、経営者として考えなければいけないことは、ポートフォリオのバランスということです。一つのビジネスユニットに頼るのはやはり危険だということです。おかげさまで、僕たちの会社のビジネスは、今回のコロナウイルス問題の影響はありません。しかし、大学進学、専門学校進学、語学学校留学、ワーキングホリデー、日本のお客様、すでにオーストラリアにいるお客様、などのそれぞれのお客様のセグメントにおいて、どんなリスクがあるのか、将来その可能性はどのくらいなのか、対応策としての準備はどんなことがあるのかなど、再点検をする良い機会だったと思います。

結論としては、今までと変わらず少数精鋭でフレキシブルに動ける体制を作り、それぞれのビジネスユニットのバランスを取りながら無理をせず、十分なキャッシュを持って、体力を蓄えて置くことしかないと思います。無理をして、成長だけを目指していくと、いつかその代償を払うことになるのだと思います。

3秒間の余裕

日本出張中です。オフィスのある渋谷は、コロナウイルスの関係で中国からの観光客が少ないせいか、いつもより道が空いている気がします。普段は長蛇の列のお寿司屋さんも、今日は随分と待っている人が少ない感じでした。きっと観光客をターゲットとしたビジネスは、大きな打撃を受けているのだと思います。早く収まっていくことを願うばかりです。

さて、日本に来ると、オーストラリアと日本のちょっとした違いを書いているのですが、今日はエレベーターのお話です。日本から、オーストラリアに留学や移住して暮らし出すと、時間の流れが急に遅くなります。オーストラリアでエレベーターに乗って、なんで、みんな「閉じる」のボタンを押さないんだろうと最初の頃は不思議でした。日本人はエレベーターに乗り込んだら必ず「閉じる」のボタンを押しますよね。ただでさえ反応の遅いオーストラリアのエレベーターの扉が閉まるのを3秒?5秒?待つ余裕がありませんでした。


ところが、オーストラリアに住み出して約10年、全くその3秒を待つことが気にならなくなり、エレベーターに乗る時は考え事をしたり、人と話をしたりして過ごしています。そんな感じで、昨日、渋谷のオフィスのエレベーターに最後に乗り込んで考え事をしていたら、先に乗っていた人が、「なんでこのおっさんは、閉じるのボタンを押さないでのんびりしてるわけ?」という顔をしながらボタンを押してました。あー、ごめんね。

でも、この3秒間に、「おはよう」「寒いですね」みたいな挨拶や会話をする発想を持つことで、日本は少し住みやすくて素敵な社会になると思いますよ。