小さい大学で修士号を取る戦略

サザンクロス大学という中堅の大学に行ってきました。この大学は、ゴールドコースト、リズモア、コフスハーバーと言う、クィーンズランド州南部からニューサウスウエールズ州の北にある町にキャンパスが分散しています。今回私が訪れたのは、新しくビルを建てているゴールドコーストキャンパス。
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copyright: Southern Cross University


このキャンパスはゴールドコースト空港の横にビルがあるので、日本との行き来はとても便利。都会の喧噪はいやだけど、都会に出るのに何時間もドライブしなくてはいけないくらい田舎も嫌いという人にはいいかもしれません。大学の教授の中には、大学に出勤する前に毎朝サーフィンをしてから来るという方もいて、とてもフレンドリーな先生たちでした。

ただ、このような小規模の大学には、クィーンズランド大学などのような広大なキャンパスで多くの学生たちが芝生で勉強しているなどの環境は無いので、私としては大学生ではなく、修士を取得するという明確な目的がある大学院生にお勧めです。現在、オーストラリアでは優秀な留学生を増やすために、2年間の修士プログラムを卒業するとその後の2年間の滞在ビザを申請でき、その間に就職をしてビジネスビザや永住権につなげやすい環境が整っています。

たとえオーストラリアでの永住権が難しくても、オーストラリアでの修士資格は日本をはじめアジアやその他の国での就職には有利になります。日本で大学を卒業した人は、ワーキングホリデーという選択肢だけではなく、オーストラリアで大学院に行く事も検討してみてください。確かに費用はずーっとかかりますが、ワーキングホリデーの後にオーストラリアに住みたくなってバイトと安い学校でビザをつないでいくよりも、長期的には成功できると思います。

全力を出し切っているのか?

7月の最初の週末は、毎年ゴールドコーストマラソンが開催されます。今年は団体登録が可能な20名以上のメンバーを集めて「オーストラリア留学センター」チームで参加しました。団体で登録すると10%割引になるし、ゼッケンの受け渡しなども代表者が前日に会場まで取りに行けばいいので、とても便利でした。今後も毎年続けていければと思っています。

私はハーフマラソンを走ったのですが、昨年は無計画で走って後半フラフラだったので、今回は計画をしっかり作って走ってみました。最初の11キロは1km5分ペース、残りの10kmは6分ペースというものです。予定通りに1時間55分でゴール。計画通りだったので、それはそれで満足しなくてはいけないのですが、観客が並んで応援してくれる最後の300メートルは、スピードアップして颯爽とゴールしたいと思っていたのに足が動きません。体がそのゆっくりとしたペース以外受け付けなかったので、同じペースでゆっくりとゴールしました。満足満足、と思っていたら、私の考え方を覆す衝撃的な光景が。。
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そうです、フルマラソンで優勝したのはあの公務員市民ランナーの川内選手。毎月フルマラソンの試合に出ながら、毎回死んでもいいというくらいすべてを出し切る事で有名な選手です。今回も2位に1分以上の差をつけて、独走なのに最後のこの必死な走り方。私の倍の距離を走っているのにこの違い。全力を出し切るというのが、いかに練習や努力や準備が必要なのかを思い知らされた経験でした。
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「自分はあんなに全力を出し切って生きているのか?」日曜日から、私の頭の中で何度も繰り返されている自分への問いかけです。
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アジアでは作れないアジアのネットワーク

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先日、クィーンズランド大学のエージェントセミナーに参加してきました。アジア・オセアニアのトップのビジネススクールを持つこの大学へは世界から多くの留学生たちがやってきます。残念ながら日本から参加しているエージェントは私たちだけ、他の日本のエージェントは語学学校だけに焦点をあてているのかもしれません。


セミナーの中で印象に残ったのは、クィーンズランド大学で学んでいる留学生の国別ランキング。中国、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、、、そして日本は8位でした。

これは何を意味しているのかと言えば、アジア各国の優秀な学生たちはオーストラリアの大学に学びに来て、すでにネットワークを作り始めているのです。もちろん、そこにはオーストラリアの若者たちも加わり、アジア・オセアニアの将来活躍する若者たちが動き出しています。日本人の学生たちがその流れについていけているのか、ちょっと心配です。

日本の企業やそこで将来働く若者たちにとって、アジアやオセアニアとのネットワークは必ず構築していかなくてはならないものです。それをアジアに行って作るのか、多くの優秀な若者が集うオーストラリアの大学で作るのか、戦略としてどちらが効果的なのか考えてみるべきだと思います。

 

二極化はいつの時代もどこにでも

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どんな業界にも伸びている会社と低迷している会社がある。

どんな時代にもワクワクする商品とそれを模倣する商品がある。

どんな都市にも高い学費を払うに値する学校とお金を捨ててしまう学校がある。

どんな国にも、成功する日本人留学生と、

「つまんねー」と言いながら日本人同志でつるんでいる留学生たちがいる。

どんな世界でも、自分の環境を自分で変えていける人間と、

「社会が悪い」と文句を言いながら世界が変わる事を待っている人間がいる。

そして、人生は一度きりだ。

最低賃金がまた上がる

オーストラリアでは、毎年7月が会計年度のスタートとなり、この時期には次年度の最低賃金などが発表されます。先日発表されたこの7月からの最低賃金は時給16.37ドルです。1豪ドルが90円とすると、日本円では1,473円です。日本の全国の平均最低賃金は時給749円。(厚生労働省のホームページより)ということはオーストラリアの最低賃金は日本のほぼ倍であるということが分かります。
オーストラリアドル

私のようにオーストラリアで会社の経営をしていると、最初の頃はその人件費の高さに頭を悩ます事も多かったのですが、今は逆にそれだけ払うのだから、育成して付加価値を生んでくれる一人前のスタッフとして頑張ってもらおうと発想の転換が出来ました。(というか、そう考えなければ、経営は成り立ちません。)そうなると、若手でも新たなチャンスが与えられ、やらせてみると、とてもいい働きをしてくれて、そのスタッフもさらに成長するという、会社にとってもスタッフ個人にとってもうれしい状況が生まれます。

日本で最低賃金を上げると、経営者が人員削減に走るから良くないという人もいるようですが、長期的な視点で考えたら、賃金を上げてそれに見合った付加価値を従業員に求めていった方が、従業員の方もスキルアップができるので、企業も個人も成長できるので社会としては好ましいと思います。日本もオーストラリアのように倍の最低賃金レベルに思い切って変えてしてしまうと、思わぬ発想の転換が出来るかもしれませんね。

留学を転職に活かす3つの目標

先日、日本に出張していたときに、転職エージェントのトップの方とお話をさせていただく機会がありました。転職するにあたり留学生の何が評価されるかを、転職のプロから聞くことができたので、シェアをしておきます。私たちも以下のことに気をつけながら、留学中のサポートをしていきたいと思います。
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ビジネスで使えるレベルの英語力


日常会話に困らないレベルの英語では、転職に活かせる英語力とは言えません。英語を使う仕事につきたいと多くの方が考えていますが、ビジネスの世界で使える英語は友人たちと話す英語とはかなり違います。友達と話す日本語で採用面接は通らないのと同じです。敬語に近い表現もあるし、しっかりとトレーニングを受けておく必要があります。また、英語でのプレゼンテーションや何かを論理的に説明するなどのスキルも必要です。語学学校の中にはビジネス英語クラスを開講しているところもあるので、ぜひチャレンジしてください。

異文化の環境で苦労したり、問題の解決について語れることがあること

現在、多くの日本のメーカーやIT企業では海外で活躍できる人材を探しているそうです。しかし、なかなかいい人が見つからないとのこと。候補者には英語力はそれなりの方は多くいるのですが、単に英語力だけでは採用されません。日本から現地に派遣されて、相手の国や企業という異文化で相手の状況も理解しながら問題解決が出来る人が求められているということです。今では昔と違って、日本のやり方を現地で教えてやるという発想では通用しないのですよね。こんなときには、オーストラリアの学校で様々な国籍の仲間と過ごした経験が活きてくると思います。

そして、何かひとつ人と差別化できること

これは特別な資格ではなくてもよく、自分の強みや得意なことを人と差別化してアピールできるかが大切だと言うことです。図面が描けるとか、プログラムが作れる、プレゼンテーションが得意、私だったら新規事業を立ち上げるのが得意などなど、自分がしっかりとできることをうまく表現する必要があるそうです。このポイントって私も多くの留学生に接していて感じることなのですが、みんないいものを持っているのに、なかなか上手く表現できていなかったり、そもそも自分の良さに気づいていないことが多いと思います。自分のどの部分を研ぎすましていくのか、そんな話も留学中に出来ればと思っています。

5年ごとに仕事が変わるとしたら

どんな業界であっても、同じ仕事のやり方で5年以上継続して成長できる会社は無いと思います。ということは、どんな会社に勤めていたとしても、5年後の自分はすごく成長しているか、全く違う世界に飛び込んでいるかもしれないと仮定しておいたほうがいいことになります。会社が大きければ、ジョブローテーション(この言葉も死語になってますね。)などで、様々な部署を移動することもあるかもしれませんが、それよりも、5年間である実績を残して違う会社や業界に移動していくことのほうがこれからは主流になっていくのだと思います。
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そこで大切なマインドセットというのは、5年分の過去を簡単に捨てられる人になれるかということです。会社にしがみつくおじさんたちはかっこ悪いと多くの若者は思っているかもしれませんが、それまで築いてきた5年間の蓄積をゼロにして、どうなるか分からない世界に飛び込む勇気を持つというのはなかなか大変です。しかし、これからの時代はそれをしていかないと40歳くらいになったときに、もしリストラを宣告されたらどこにも行く場所がなくなってしまうのです。


そんなキャリアチェンジのときに、1年間ギャップイヤーとしてワーキングホリデービザなどを使って海外で過ごすというのが、どうも欧米や南米などの人たちの考え方のようです。母国では公務員だったとか、シェフだったとか言う人たちが自分のキャリアを一度見直しにオーストラリアにもやってきます。日本ではかつては、キャリアに空白を作ることは良くないと言われていましたが、充実した留学やワーキングホリデーはギャップイヤーとして逆にメリットにできる時代が来ています。世界からやってくる、同じようなライフステージの人々と出会い、その人々と人生について語り合えることは次の5年間を構築するためにとてもいい経験になると思います。

ゆっくりした時間

「ぼくがもし、53分っていう時間をすきに使えるんだったら、どこか泉のほうへ。ゆっくり歩いてゆくんだがなあ」と王子さまは思いました。       星の王子さま サン・テグジュペリ 内藤濯訳

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日本の生活からオーストラリアにやってくると、そののんびりした時間の流れに、最初はかなり居心地が悪く感じます。バスに乗るときに運転手とちょっとした話をしている人もいるし、待ち合わせに10分くらい遅れてくる人も必ずいるし、世界で一番時間厳守な日本人にとって、ここで流れているゆっくりした時間は何か日本人が築き上げてきたことを否定されるようで、イライラしている留学生も少なくありません。

また、日本人ほど効率化が好きな国民もいないので、留学中もいつも何かやっていないと気が済まずに、それがストレスになっている人もいるようです。英語も勉強したいし、海外の友達とも遊びたいし、クラブにも行きたいし、バーベキューにも誘われたし、ファームで働くのも興味があるし、いろいろな街にも行ってみたいけど、お金がないからバイトもしないと。。。そんなことを悩んでいるうちに、時は過ぎていき、ますます焦ってしまいます。

しかし、留学やギャップイヤーで大切なのは、ゆっくりと泉まで歩いていくことなのだと思います。

いかに多くのことを楽しんだかとか、どのレストランでおししいものを食べたかを競うのではなく、誰かに話したり、自慢する必要の無い、自分だけの時間を大切にしていってほしいと思います。

就職のときに考えたこと

『で、僕がそこで何をするかっていうとさ、誰かその崖から落ちそうになる子どもがいると、かたっぱしからつかまえるんだよ。つまりさ、よく前を見ないで崖の方に走っていく子どもなんかがいたら、どっからともなく現れて、その子をさっとキャッチするんだ。そういうのを朝から晩までずっとやってる。ライ麦畑のキャッチャー、僕はただそういうものになりたいんだ。たしかにかなりへんてこだとは思うけど、僕が心からなりたいと思うのはそれくらいだよ。かなりへんてこだとはわかっているんだけどね。』    The Catcher in the Rye   J.D.サリンジャー 村上春樹訳
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By Arenamontanus


たぶん、私たちの世代はほとんどの高校生がこの本を読み(村上春樹の訳ではなかったけど)インチキくさい大人の世界や社会に対して、嫌悪感を持っていました。といっても、この本自体に嫌悪感を持っている人も多かったので、高校のときは、一度読んでそのまま本棚行きとなっていました。

そして、どういう訳か就職活動を始めたとき、本棚に並んでいたこの本を何となく読み返して、ライ麦畑のキャッチャーってどんな仕事なんだろうと考えたのです。そのときには、自分自身がインチキくさい大人にならないように、いつも情熱を持って楽しんで仕事ができる場所を探そうと思いました。

幸運にも、とてもいい会社で働くことができ、エキサイティングなビジネス人生を送らせてもらいました。そして、独立をするというときになって、またこの『ライ麦畑のキャッチャー』のことを思い出したのです。今、私がやっている出来るだけ多くの若者たちに海外で学ぶことを経験してもらう仕事は、まさにインチキくさい社会に落ちてしまわないようにするキャッチャーだと思っています。旅行とかではなく、本当に世界を経験した若者たちは、例えどんなおかしな社会に入ったとしても、自分の力でそれを良くしていけるものだと信じています。

私は、きっとこれからも、インチキな大人や権威や社会と戦い続けながら、若者たちが簡単に崖から落ちないように見張っているんだと思います。

 

意思決定するための情報

先日、オーストラリアの大学で学んでいる娘から「レーシック手術を受けようかどうか考えているけど、どう思うか?」という相談のメールがありました。彼女の視力はとても悪い訳ではないのですが、日常生活のために、夜にコンタクトレンズで目の形を矯正して、昼間は裸眼でいるということをしています。

親としては、どうしても手術のリスクについて考えてしまいます。ネット上で交わされているやり取りは、広告のようなものから、悪意のあるものまで様々で、ニュートラルな立場にたったものはなかなか見つかりません。確かに、人の意見というものに中立なんてことはほとんど無い訳ですから、どの情報を信じるかの意思決定も難しい話です。
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そんな情報を一通り見た後、娘に電話をして、リスクについてどう判断すべきかを聞いたところ、「インターネットにやり取りがされている質の悪い情報は見ないようにしてる。それよりも医学的な研究や論文にアクセスして決めるようにするよ。」と大学生らしい答えが。すでに世界では様々な研究がされていて、英語でリサーチが出来れば意思決定をするための十分な情報は手に入ります。

このようなリサーチをするという姿勢が、英語というツールを普通に使える大学生たちの一般的なものであるとしたら、やはり英語はこのレベルまで出来た方がいいと思います。そして、1年でもいいので日本の若者には世界の大学というものを経験してほしいと思うのです。休学して留学をしに来ている学生たちが良く話してくれるのが、この英語の世界でリサーチの技術を学ぶことが面白いということです。

娘がどのような判断をするのかは分かりませんが、私の仕事はそのプロセスを確認して、判断を尊重することだと思っています。親の出番はだんだん少なくなってきました。それは、きっといい事なのでしょう。